多くの神々がいるインドにおいて、ハヌマーンは絶大な人気を誇る神格の一人です。ラーマに献身的に使えるハヌマーンは、悪王ラーヴァナとの戦いにおいて傷を負ったラーマの弟ラクシュマナを癒す薬草を得るために、戦場スリランカからヒマラヤへとひとまたぎで渡りました。しかし薬草が見つからず、その怪力で山を丸ごと持ち上げ、スリランカへと運び帰ります。この献身的な姿、そして強さが、現代でも多くの人々を惹きつけています。
ヨーガにおいても、このハヌマーンに捧げられるものが、ハヌマーン・アーサナ(猿王のポーズ)として存在しています。前後に足を大きく開脚するこのアーサナは、ハヌマーンがスリランカからヒマラヤへとその足でひとまたぎした姿に重なります。
このハヌマーン・アーサナは、股関節や傷つきやすいハムストリング筋の高い柔軟性を必要とします。その修練の過程では、時に痛みが生じることも避けられません。しかし、その過程にこそ、学ぶべきことが多くあることが伝えられます。
主が苦しむ姿を見たハヌマーンは、深い献身によって驚くほどに飛脚し、山をも持ち上げました。苦痛のように障壁がある道も、抵抗せず受け入れること、そして信じる心と献身によって、大きく道は開き強い力が生み出されていくことを、ハヌマーンの姿が物語っています。
ヨーガの修練は、自分自身の肉体という小さな世界の中で、如実にそれを気づかせてくれます。神聖なプラクティスに心を開き自身を捧げる中で、特にこのハヌマーン・アーサナにおいては、股関節やその筋が驚くほどに開く感覚をはっきりと感じる瞬間があります。心のあり方により、不可能となるものは何もないということを、自身の内に見出すハヌマーンを通じ、学ぶように思います。
心の働きに、体は素早く反応します。アーサナの完成度ではなく、その過程で得る心のあり方、その学びが何よりも大切であるということに気づかされます。崇高な存在が宿る自身の肉体の内は、一番の学びの場であるのかもしれません。ハヌマーンのように、強く、そしてしなやかに、日々を過ごしていきたいと感じています。
(文章:ひるま)
アーサナ
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