これまでに、aで終わる男性名詞、中性名詞を紹介しましたが、
今回は、āで終わる女性名詞です。
senā (女性名詞、軍隊)の格変化 | |||
単数 | 両数 | 複数 | |
主格 | senā | sene | senāḥ |
対格 | senām | sene | senāḥ |
具格 | senayā | senābhyām | senābhiḥ |
為格 | senāyai | senābhyām | senābhyaḥ |
奪格 | senāyāḥ | senābhyām | senābhyaḥ |
属格 | senāyāḥ | senayoḥ | senānām |
処格 | senāyām | senayoḥ | senāsu |
呼格 | sene | sene | senāḥ |
語幹の最後が ā になっている名詞はほぼ女性名詞です。
語幹というのは、語尾が変化する前の名詞の元の形のことで、
辞書の見出し語になります。
ここで勘違いが起き易いのですが、
語幹末が ā で終わる女性名詞と、
男性名詞、中性名詞で語尾変化した後に ā で終わる単語とを
区別しなければなりません。
例えば、-anで終わる男性名詞は、主格単数が-āになります。
brahman- という単語がブラフマー神を表わす場合は
男性名詞となるので、主格単数の形はbrahmā(ブラフマー)。
-tṛで終わる男性名詞は、主格単数が-tāになります。
savitṛ- (サヴィトリ)という男性名詞は、
主格単数の形はsavitā(サヴィター)。
サヴィトリを女神と誤訳する例が見られますが、
もともと男性神です。
ただし、savitrī- (サヴィトリー)
またはsāvitrī- (サーヴィトリー)
のように語幹が変化すると女性名詞となり、
「サヴィトリへの讃歌」=ガーヤトリーマントラを意味します。
こういう母音のちょっとした変化によって、
男性名詞が女性名詞になったり、
中性名詞が男性名詞になったりするのは
サンスクリット語の繊細な特徴。
文法を知ると単語の成り立ちが分かって
言葉の意味を深く知ることができるようになります。
以下は、āで終わる女性名詞を使った文章の例です。
(1)आमयेन मम प्रिया मृता।
āmayena mama priyā mṛtā|
「病気によって、私の妻は死んだ」
आमयेन / āmaya 病気(男性名詞、具格、単数)
मम / mad- 私の(1人称代名詞、属格、単数)
प्रिया / priyā- 妻、恋人(女性名詞、主格、単数;形容詞priya- 愛しい~)
मृता / mṛta- 死んだ~(動詞語根mṛ-(死ぬ)から作られた過去受動分詞、女性形、主格、単数)
(2)कथायाम् दुर्गायै प्रशंसा दत्ता।
kathāyām durgāyai praśaṁsā dattā|
「物語の中で、ドゥルガー女神へ賞賛が与えられた」
कथायाम् / kathā- 物語(女性名詞、処格、単数)
दुर्गायै / durgā- ドゥルガー女神(女性名詞、為格、単数)
प्रशंसा / praśaṁsā- 賞賛、評判(女性名詞、主格、単数)
दत्ता / datta- 与えられた~(動詞語根dā-(与える)から作られた過去受動分詞、女性形、主格、単数)
(文章:prthivii)
コメント