サンスクリット語では、動詞は語幹の作られ方に応じて10種類に分類されます。
今回は6類動詞です。
バガヴァッド・ギーター8章11節から
例文を紹介します。ここは、アルジュナから
「ブラフマンとは何か?アートマンとは何か?」と問われた
クリシュナが説明を始める場面です。
この文章には関係代名詞yatが含まれているので
構文的には中級以上になりますが、
比較的読みやすい文体です。
यदक्षरं वेदविदो वदन्ति विशन्ति यद्यतयो वीतरागाः । यदिच्छन्तो ब्रह्मचर्यं चरन्ति तत्ते पदं संग्रहेण प्रवक्ष्ये ॥८- ११॥ yad-akṣaram-vedavidaḥ-vadanti viśanti yad-yatayaḥ-vītarāgāḥ | yad-icchantaḥ-brahmacaryam-caranti tat-te padam-saṁgraheṇa pravakṣye ||8.11|| (-の部分は連声無しで表記) 「ヴェーダを知る者たちは、 それ(ブラフマン)を不滅のものであると言い、 欲望を捨てた修行者たちは、それに入り、 それを望む人々は禁欲行を行う。 あなたにその境地を簡潔に語ろう。」
上記の文章の中に出てくる、
विशन्ति viśanti が6類の動詞です。
動詞語根は √viś- (入る)。
√viś-が属する「6類」の特徴は、
1.語根の母音がguṇa(グナ)にもvṛddhi(ヴリッディ)にも変化しない。
2.最後に-a-を添えた形が語幹になる。
語根√viś- の最後に-aを付けた viśa- が語幹です。
そして、またまた繰り返しになりますが、
動詞は「語幹(語根から変化したもの)+語尾」のセットで単語として意味をなします。
語尾は、主語が何なのかを明示する役割があって、
次の表と見比べてみると、viśanti の語尾と同じ形なのは
3人称の複数形 –nti ですね。
現在形能動態(パラスマイパダ)の語尾 | |||
単数 | 両数 | 複数 | |
1人称 | -mi* (私は~) |
-vaḥ* (私たち二人は~) |
-maḥ* (私たちは~) |
2人称 | -si (あなたは~) |
-thaḥ (あなたたち二人は~) |
-tha (あなたたちは~) |
3人称 | -ti (彼(それ)は~) |
-taḥ (彼ら二人(それら二つ)は~) |
-nti (彼ら(それら)は~) |
*語幹の最後の母音-a-は、m、vの前で長母音になります。
√viśの活用を全てあげたのが次の表です。
√viś(入る)の現在形パラスマイパダ | |||
単数 | 両数 | 複数 | |
1人称 | viśāmi (私は入る) |
viśāvaḥ (私達二人は入る) |
viśāmaḥ (私達は入る) |
2人称 | viśasi (あなたは入る) |
viśathaḥ (あなた達二人は入る) |
viśatha (あなたは入る) |
3人称 | viśati (彼は入る) |
viśataḥ (彼ら二人は入る) |
viśanti (彼らは入る) |
その他の6類動詞の例
√tud-(打つ) tudati(パラスマイパダ3人称単数)
語根の最後が母音の場合、
語幹母音-a との間に半母音が入ります。
√ri-(流れる) riyati(パラスマイパダ3人称単数)
√nu-(讃える) nuvati(パラスマイパダ3人称単数)
例外的な語幹は、
(1)鼻音を挿入するもの
√kṛt-(切る) → kṛintati
√lip(塗る) → limpati
√śic(注ぐ) → śiñcati
(2)cchaに変わるもの
√iṣ-(望む) → icchati
(3)半母音の母音化(サンプラサーラナ)
√prach(問う) → pṛcchati
√vyac(囲む) → vicati
例文:バガヴァッド・ギーター8章11節
यदक्षरं वेदविदो वदन्ति विशन्ति यद्यतयो वीतरागाः । यदिच्छन्तो ब्रह्मचर्यं चरन्ति तत्ते पदं संग्रहेण प्रवक्ष्ये ॥८- ११॥ yad-akṣaram-vedavidaḥ-vadanti viśanti yad-yatayaḥ-vītarāgāḥ | yad-icchantaḥ-brahmacaryam-caranti tat-te padam-saṁgraheṇa pravakṣye ||8.11|| (-の部分は連声無しで表記) 「ヴェーダを知る者たちは、 それ(ブラフマン)を不滅のものであると言い、 欲望を捨てた修行者たちは、それに入り、 それを望む人々は禁欲行を行う。 あなたにその境地を簡潔に語ろう。」
出てくる単語
yad- それ(関係代名詞、中性、単数、対格)
akṣara- 不滅の(形容詞、中性、単数、対格)
vedavid- ヴェーダを知る者、ヴェーダ学者(男性名詞、複数、主格)
√vad-(vadanti) 語る(現在形能動態3人称複数)
√viś- (viśanti) 入る(現在形能動態3人称複数)
yati- 修行者、隠遁者(男性名詞、複数、主格)
vītarāga- 欲望(rāga)を離れた(vīta)者(複合語、男性形、複数、主格)
√iṣ-(icchantaḥ) 望む(現在形能動態3人称複数)
brahmacarya- ヴェーダ学習、ヴェーダ学習に入る学生期、禁欲の行(中性名詞、単数、対格)
√car-(caranti)行く、行う(現在形能動態3人称複数)
tat- それ(代名詞、中性、単数、対格)
te 汝、あなた(二人称代名詞、単数、為格)
pada- 境地、地位、足跡(中性名詞、単数、対格)
saṁgraha- 集約、まとめ(男性名詞、単数、具格)<具格で副詞的な意味:手短に、簡潔に
pra√vac-(pravakṣye) 語る(未来形能動態1人称単数)
(文章:prthivii)
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