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サンスクリット

サンスクリット語 これまでの振り返り

Male head icon with an om sign

これまでに、短母音、長母音で終わる名詞の格変化を紹介してきました。
母音で終わる名詞としては、ほかに二重母音で終わる名詞もあります。
例えば、
रै rai- (富)男性名詞、まれに女性名詞
गो go- (牡牛)男性名詞/牝牛:女性名詞←意味によって性が変わる
नौ nau- (舟)女性名詞

二重母音で終わる名詞は数が少なく、
しかも格変化をするときの変化の仕方が複雑なため、
初歩の学習段階では難しいです。
今回はこれらの格変化は挙げませんのでご了解ください。

ここで一度、今までの内容を簡単に振り返ります。

サンスクリット語の名詞の特徴は主に4つあります。

(1)語幹+語尾から成り立つ

文において名詞は 【 語幹+語尾 】という形で成り立っています。

देवः devaḥ 神は
देवम् devam 神を

この二つの単語を比べてみると、
共通している部分deva-が「語幹」、単語の基本の形です。
辞書の見出し語にもなります。
最後の違っている音の部分が「語尾」です。

日本語は、助詞を使って単語動詞の意味を繋ぎますが、
サンスクリット語には助詞がなく、
その代わりに語尾を変化させることで、文の中での役割や
他の単語との関係を明らかにしているのです。

英語も、名詞に複数形がありますね。
語末にsを付けるのも、語尾の一種です。

(2)文法的な性の区別(男性名詞、中性名詞、女性名詞)がある

文法的な性は、生物学的な性別と一致している場合があります。

たとえば、देव deva- 男の神は男性名詞で、देवी devī- 女神なら女性名詞。
अश्व aśva- 牡馬は男性名詞で、अश्वा aśvā- 牝馬は女性名詞。

けれども、無生物名詞や抽象名詞の場合は全く恣意的に見えます。
たとえば、「命」や「人生」という意味のजीव jīva- は男性名詞ですが、
同じような「命」という意味のआयुस् āyus- は中性名詞です。
これらは格変化の仕方に応じて分類された文法的性別です。

意味によって性が変わる場合もあります。
宇宙原理としてのब्रह्मन् brahmanは中性名詞ですが、
その神格化したブラフマー神は男性名詞となります。

(3)数(すう)の区別(単数、両数、複数)がある

単数は、ひとつのもの、
両数は、ふたつのもの
複数は、三つ以上のもの
を表わします。

पुत्रः देवलोकम् गच्चति। putraḥ devalokam gaccati|
「息子は、天界へ行く」

पुत्रौ देवलोकम् गच्चतः। putrau devalokam gaccataḥ|
「息子二人は、天界へ行く」

पुत्राः देवलोकम् गच्चन्ति। putrāḥ devalokam gaccanti|
「息子たちは天界へ行く」

主語「息子」の人数が違っていることは日本語訳からも分かりますが、
述語動詞の「行く」gacchati、gacchataḥ、gacchantiも
主語の数に応じて、それぞれ単数、両数、複数になっています。

(4)名詞や形容詞の文中における役割=「格」が、全部で8つある

それぞれの格を簡単に説明すると、

主格・・・主語や述語。また、それらを修飾する形容詞。「神は」「神だ」
対格・・・目的語「神を」
具格・・・方法、手段、共有「神によって」「神とともに」
為格・・・間接目的語、動きの向かう先「神へ」(マントラでナマハと共に使われる格)
奪格・・・理由、発端、動きの始まり、比較「神より」
属格・・・所属、所有「神の」
処格・・・場所、空間「神において」
呼格・・・呼びかけ「神よ!」

他にも、慣用句としての使い方や特殊な用法はありますが、
まずは一般的な上記の用法を覚えておけば大丈夫です。

格語尾の形は、さらに
語幹がaで終わる男性名詞、中性名詞、
āで終わる女性名詞、
iで終わる男性名詞、中性名詞、女性名詞、
īで終わる女性名詞、
uで終わる男性名詞、中性名詞、女性名詞
ūで終わる女性名詞、、、etc.
というふうに、
語幹が違えば、それぞれ違った変化をします。

実は、「基本的格語尾」というものがあります。
これについては後で触れる予定です。
語幹にこの基本的格語尾をくっつければ全ての格変化に対応可能
といいたいところですが、実際には不規則な変化が多かったり、
語幹の母音が変化する規則を理解しなければならないため、
まずは語幹ごとの格変化を学んだ方が
初学者にはむしろ分かりやすいと思います。

もし本当にサンスクリット語を学ぼうと思うならば、
小さめのノートやルーズリーフの1ページごとに
それぞれの格変化の表を手で書き写すことをお勧めします。
印刷するよりも、自分の目で見て、
手で書いて、口に出して、耳で聞く、
その方が記憶に残りやすいからです。

最初からキッチリ格変化を覚えようとしなくても大丈夫。
とりあえず、いろいろな格変化の表を眺めたり
比べたりしてみてください。

その後に、母音の変化の規則を知ると、
「あ、そういうことか」と合点がいきますよ。

(文章:prthivii)

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