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インド音楽

188、アーユルヴェーダ音楽療法入門50 (用語辞典:キ・ク)

カ行・キ
キラナ・ガラナ:
北インド近世の新古典声楽「カヤール」の一派。16c.の楽聖ターンセンの娘の系譜「ヴィーンカル・ガラナ」から派生した非ターンセン血統のヴィーンカル(弦楽器ヴィーナ演奏者)のUd.Bande Ali Khanから発したが、主要カヤール流派の中で、最も早く西洋楽器(手ふいごの鍵盤楽器:ハルモニヤム)による伴奏を起用した。(伝統的な微分音を無視することを意味する) 上記創始者がJaypur-Ghatana、Indore-Gharanaの強い影響を受けていることも考慮すべき。

キールターン:
ヒンドゥー讃歌(献身歌)の一種。主唱者と合唱隊の掛け合いによる。「キールターン」の字義は「繰り返し」とも言われる(※)。その起源は、ヴェーダ時代に遡る、という説がいる一方。今日の歌唱様式の原型は、15~16cのヒンドゥー献身運動「バクティー」から発したとされる。同源の「バジャン」が物語性(叙事詩)が強く、楽曲形式も複雑で規則があるのに対し、単純な構造が主である。
元来、インド~ヨーロッパ語族、及びアフリカのバントゥー系には、所謂「Call & Responce(以下C&R)」の歌唱法が古くから発達していた。音楽研究者は語らないが、必然的にメソポタミア、古代エジプトにその原型が見られる筈。その末裔は、「バジャン~キールターン」から遥か西に至ったキューバの「ソン歌謡」にさえ見られる。「ソン」では、「叙事詩:ギア」を歌い、後半に「C & R」部分が来る。それには「主唱(雄鶏と呼ばれる)と合唱隊(コーラス:Coroと呼ばれる)」の他に「旋律楽器や太鼓のアドリブ・ソロ(Solo)とCoroの掛け合い」なども行われる。「ソン」では、この部分(キールターンに相当する)を「Montuno」と呼ぶ、
最も重要なことは、いずれも「リズムサイクル」に厳しく順ずる点である。末裔のひとつでもあるジャズの即興掛け合いも、それゆえに「4-Bars(四小節)」などと呼ばれサイズを揃える。逆に、リズムサイクルの理論を拡大解釈して、主唱者が2サイクルの様々な歌詞を歌い、合唱隊は1サイクルの定型詩だけで返す場合も少なくない。
創始期には、まだ楽曲形式が不定であったバジャンの末尾にキールターンが付加されていたと考えられ、キューバの「ソン」が、次第に「Montuno」が重視され(庶民が加わり盛り上がり易い為:大衆迎合)たことと同じように、「バジャン末尾」から乖離して独立した歌唱様式に至ったと考えることは容易である。インド文化にハマっている人々の中には「キューバの歌など関係ないだろう」と思う感情思考の人が少なくないが、「ものの有様とその源流」を論理思考で理解するには、「異なる派生の比較・類推」、「置き換え」と「二点測量」は不可欠である。
例えば、この先「キールターン・ブーム」が飽きられるとしたら、その単調性に他ならないであろうが、原点回帰し、「前唱歌~バジャン~キールターン」の様式を復活させれば、極めて意味深い説法と音楽が成り立つであろう。(現にUP州の春歌:ホリーやカジャリーには、そのスタイルが残っている)
元来のキールターンの詠唱には、宗派によって「九つの段階(場面)」や「五つの場面」があり、イスラム系神秘主義の中で音楽を重要視する宗派の祈祷システムに類似する。つまり、一般庶民に向けてバクティーを布教した際の「キールターン」の姿と、帰依者・献身者たちの内向的儀礼(秘儀も含む)の姿にはかなり隔たりがある、と見ることが出来る。いずれにしても、日本では後者の検証・学びはもちろん、一般への実践は難しい。
音楽的スタイルは、ベンガル地方のもの、北インドのものが有名であり、その他、シク教には独自なものがある。

しばしば「サン・キールターン」とも呼ばれるが、この場合の「接頭語:サン」は、「サ行」を参照されたい。
(※)また、「キールターン」の字義には「繰り返し」の他に、「語り、説法」の意味があるとされるが、派生的でもある。同源の「Krt」からは近代南インド古典声楽の「Kriti」も生じているが、ここには「繰り返し」や「C&R」の要素はなく、純然たる「ヴィシュヌ讃歌」である。

キルヴァーニ:
南インド古典音楽の旋法(ラーガ)のひとつ。アラブ・トルコのマカームのひとつと類似し、西洋人から「オロエンタル・マイナー」と称されるものと類似するため、1950年代末以降のインド音楽の海外演奏でお飲んで用いられ、やがて北インドの演奏家も起用するようになった。北インドの類似ラーガは、古代に衰退してしまった。

キンナラ:
天上の楽師。ブラフマン教後期に既に「アシュラ神群」に属する下級神の扱いを受け、後の仏教、ヒンドゥー教でも下級神。良くて精霊的な存在とされた。仏教では、他の下級神同様に「釈迦に詫び、懇願し仏法の守護を条件に存続した下級神:天部」とされ、音訳して緊那羅とされる。
本来、下級ではないにしても、上級紙の従者・眷属ではあったと考えられ、「ガンダールヴァ:天上の歌手」「アプサラ:天上の舞踊手」と共に、天上音楽の担い手であった。インドシナにも深く伝わり、後に小乗仏教に支配された後も進行が継承された。「キンナリ」とも言われ、寺院石彫に「キンナリ・ヴィーナ」という干瓢共鳴胴が1~2個の弦楽器が描写され、後の弦楽器ルードラ・ヴィーナの前駆型とされている。

カ行・ク

クッティー・カーラ
身分の低い音楽家を指す差別用語

クトゥ・ターン
旋律の即興的装飾法の一種。ジグザグ進行が激しい。難解なもののひとつ。

クリ:
太鼓変奏法の一種で「対句(掛け合い)の問いかけ部分」

クリヤー:
「機能、働き」のこと。

クリヤー・ヨーガ:
現代ヨガの一派。現代ハタ・ヨガ(Pistural-Yoga/体操ヨガ)とは異なり、精神ヨガ・瞑想ヨガに偏る。属する人々には、古代タントラ・ヨガからの伝統を引いているとされるが、確証はない。そもそも「Tantra」は、密教的な系譜のみではない上に、密教系タントラの中でも、後世広く知られた過激派ばかりではない。中世の「ハタ・ヨガ」の主流派は、その「密教系・過激派タントラ」に根ざしていたとされる。その中心的な教義に、特殊な瞑想法による「クンダリーニ覚醒」があり、現代クリヤー・ヨガは、その伝統を引いていると主張する。

クリシュナ:
ヒンドゥー三大神のひと柱「ヴィシュヌ神」の10の化身(Avatara)の八番目。人間と同じ姿で、色黒で表現される。七番目の「ラーマ王子」と共に、昔から庶民の人気が高い。二大叙事詩「ラーマーヤナ」ではラーマ王子が主人公で、「マハーバーラタ」では、クリシュナが助演(副主人公)。その他、クリシュナは「バガヴァド・ギータ(散文聖典)」で重要な役割を果たす。同聖典に於けるクリシュナは、禅問答のように様々な形で真理を示唆するが、後世にかなり加筆されたことが疑われ、現代、その原典の正しい形を知ることは難しい。
一方、クリシュナは、元来先住民族の神であったものがヒンドゥーに取り込まれたとも言われる。それ故、「肌の色が黒い」とされ、「クリシュナ=黒色」と説く派もある。その一方で、「シャーム=黒色」もまた、クリシュナのおびただしい「別名/徒名」のひとつに数えられる。
また、クリシュナは独自の神で、ヴィシュヌの化身とされる「マツヤ(半人半漁様)、クールマ(亀)、ヴァラーハ(猪)、ナラシンハ(半人半獅子様)」は「クリシュナの化身」と説く派もある。
前述の二大叙事詩と聖典の他にも豊富なクリシュナ神話があるが、大別すると
「生誕の物語」悪政王に苦しむ民衆がヴィシュヌに祈願し、「人間の子」として生まれると予言。それを知った王が、該当夫婦に生まれた新生児をことごとく抹殺。出産の瞬間に運び出されたのがバラ・ラーマ(ヴィシュヌの従者アナンタ竜王/蛇王の化身)と弟クリシュナと言われ、実父、養母も神格化に近い人気がある。
「乳幼児の物語」養母の目を盗んでギー(バターの類)を盗み喰うことから「マッカンチョール(バター泥棒)」の徒名を付けられた赤ん坊のクリシュナ。TV-Radioなどが無い時代、結婚前・出産前後のヒンドゥー女性のアイドルだったとも言われる。
「少年時代の物語」
羊飼いの少年として「ゴパール(ラ)」として、乳搾りの娘たち「ゴピ」との日々の物語。「ブランコ遊び」や「ホリー祭りの色水掛け」などが讃歌、劇、絵画の主題となる。「ゴピ・クリシュナ」の対句がある。
「青年時代の物語」
人妻のゴピ「ラーダ」との恋物語が極めて有名。「ラダ・クリシュナ」の対句が在る。
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「ゴピ・クリシュナ」と「ラダ・クリシュナ」の双方に共通のテーマが「笛吹き童子」である。竹の横笛「バンスリ」の別名「ムラーリ」を持つ男「ムラーリ・ダール」とも言われる。
このテーマは、古今東西に比較的多く散見され、「日本の笛吹き童子(Radio-Dramの原典はかなり古い)」「ハーメルンの笛吹き男(13cのドイツの実話?)」は特に有名。オスマン・トルコで準国境扱いを受けた神秘主義の一派では、縦笛「ネイ」が極めて重要で、「笛の音」は、或る種彼岸との交信器具(神器)とも言われる。トルコでは近代迄「笛は命を取る」と考えられ、「ひさしぶりだが、ずいぶんやつれたね」などの時に「笛吹きのようだね」という常套句があるほど。日本各地の竜蛇伝説では、笛の達人が池・沼に引きずり込まれる話は多い。実際、洋の東西で著名管楽器奏者が呼吸器疾患で早世した例も少なくない。古代インドのバラモンの菜食主義では「根菜」を食べず「竹」もまた「根と一体化(葉や果実ではない)している」として、食べず。「竹笛」も口に当てなかった(だから鼻で吹いた、という記述もある)と言われる。

クレーダカ・カパ:
「Tri-Dosha(Dhatu)」のひとつ「Kapha」の「副五要素」のひとつ。カパの総体は「留め・構築・基盤・安定・保存・接合・代謝」であるが、クレーダカ・カパは、特に「潤滑・潤い・溶解」の側面を似ない、ピッタの力で「分解・燃焼」された栄養素や、ヴァータとピッタで作り出された(副産物)不要物・毒素・老廃物を液化して処理(排出)する。例えば、クレーダカ・カパは、ピッタの「酸」と共同して「胃酸」となると同時に、「胃粘膜を更に保護する粘液」とも考えられている。広義には「唾液・涙」などの「粘膜保護液」や「関節潤滑液」などもクレーダカ・カパの働きによって分泌される。

クシャトリア:
一般に「カースト」と呼ばれる「四ヴァルナ」のひとつで、ブラフマンに次ぐ地位。神々が創作した「原人」の腕から生まれた人間たちとされる。武士階級としても知られ、二大叙事詩の時代に隆盛した。時代の符号からみても、「ブラフマン教・仏教」から「ヒンドゥー教」への流れには、王族・僧侶・貴族の権力から、地方豪族・武士階級への権力の移行が認められる。

クンダリーニ:
第一チャクラにあるとされる「エネルギーの根源」→クリヤー・ヨガ

クンティー:
弦楽器の糸巻

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何時も、最後までご高読を誠にありがとうございます。
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(文章:若林 忠宏

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