バガヴァッド・ギーター第2章第14節

मात्रास्पर्शास् तु कौन्तेय
mātrāsparśās tu kaunteya
マートラースパルシャース トゥ カウンテーヤ
しかし、アルジュナよ、物質との接触は

mātrā【女性】要素;物質、物質的世界;財産、貨幣;家具;装飾品
sparśās【男性・複数・主格、√spṛśから派生した名詞】接触は、感触は
→mātrāsparśās【男性・複数・主格、同格限定複合語】物質との接触は
※「物質」mātrāとは、五元素(地・水・火・風・虚空)の本質的性質である香・味・色・音・触覚を指す(宇野惇注)。
tu【接続詞】しかし、一方
kaunteya【男性・単数・呼格】クンティーの息子よ。アルジュナの別名。

शीतोष्णसुखदुःखदाः ।
śītoṣṇasukhaduḥkhadāḥ |
シートーシュナスカドゥフカダーハ
寒暑、苦楽をもたらすもの

śīta【中性】寒い、冷たい、涼しい
uṣṇa【中性】暑い、熱い、あたたかい
sukha【中性】安楽、歓喜、幸福、享楽、繁栄、成功
duḥkha【中性】不安、心配、苦痛、悲しみ、悲哀、困難、苦しみ
dās【男性・複数・主格】もたらすもの、引き起こすもの、与えるもの
→śītoṣṇasukhaduḥkhadās【男性・複数・主格】寒暑、苦楽をもたらすもの

आगमापायिनो ऽनित्यास्
āgamāpāyino ‘nityās
アーガマーパーイノー ニッティヤース
来ては去り、儚いもの

āgama【形容詞、ā√gam】近づく
apāyinas【男性・複数・主格、apa√i】去る、出発する
→āgamāpāyinas【男性・複数・主格】往来する;通りがかりの、暫時の
anityās【男性・単数・主格】無常の、永続しない;一時的な、はかない、束の間の;不安定の、流動的な

तांस् तितिक्षस्व भारत ॥
tāṁs titikṣasva bhārata ||
ターンス ティティクシャスヴァ バーラタ
それらに耐えよ、アルジュナよ

tān【男性・複数・対格、指示代名詞 tad】それらに、それらを
titikṣasva【二人称・単数・アートマネーパダ・命令法、意欲活用 √tij】耐えよ、堪えよ、忍耐せよ
bhārata【男性・単数・呼格】バラタの子孫よ。ここではアルジュナのことを指す。

मात्रास्पर्शास्तु कौन्तेय शीतोष्णसुखदुःखदाः ।
आगमापायिनोऽनित्यास्तांस्तितिक्षस्व भारत ॥ १४ ॥

mātrāsparśāstu kaunteya śītoṣṇasukhaduḥkhadāḥ |
āgamāpāyino’nityāstāṁstitikṣasva bhārata || 14 ||
しかし、アルジュナよ、物質との接触は、寒暑や苦楽をもたらし、
来ては去り、儚いものである。それらに耐えなさい、アルジュナよ。

バガヴァッド・ギーター第2章第13節

देहिनो ऽस्मिन् यथा देहे
dehino ‘smin yathā dehe
デーヒノー スミン ヤター デーヘー
個我にとって、この身体において

dehinas【男性・単数・属格】生物にとって;人間にとって;(肉体をそなえた)精神にとって、魂にとって;個我にとって、自我にとって。
※「デーヒン」(身体をもつもの)。宇宙の本質としての普遍的なアートマン(普遍我)=ブラフマン(梵)に対して、個体の中に宿った、個体の本質としてのアートマンのこと。このアートマンは、人の死後、身体から抜け出して存続し、次の身体に宿る(服部正明注)。
asmin【男性・単数・処格、指示代名詞 idam】ここにおいて
yathā【接続詞】〜のように、あたかも〜のように(tathāとともに)
dehe【男性・中性・単数・処格】身体において、肉体において

कौमारं यौवनं जरा ।
kaumāraṁ yauvanaṁ jarā |
カウマーラン ヤウヴァナン ジャラー
少年期、青年期、老年期があるように

kaumāram【中性・単数・主格】子供[幼少・幼年]時代、幼少期、児童期
yauvanam【中性・単数・主格】青年時代、青年期
jarā【女性・単数・主格】老齢、老い;老年期

तथा देहान्तरप्राप्तिर्
tathā dehāntaraprāptir
タター デーハーンタラプラープティル
同様に、他の身体を獲得する

tathā【副詞】そのように、同様に;そして、また
deha【男性・中性】身体、肉体
antara【形容詞】他の;近くの;内部の
prāptis【女性・単数・主格、pra√āpから派生】達成、獲得、利得;遭遇;発生
→dehāntaraprāptis【女性・単数・主格、限定複合語】他の身体を獲得すること、他の肉体に至ること

धीरस् तत्र न मुह्यति ॥
dhīras tatra na muhyati ||
ディーラス タットラ ナ ムッヒャティ
そのことについて、賢者は惑わされない

dhīras【男性・単数・主格】賢明な、思慮のある、賢い、博学の、利口な
tatra【副詞】そこに;そこへ;ここに;それのために、その場合に、その時に
na【否定辞】〜でない
muhyati【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 √muh】彼は迷う、彼は困惑する、彼は混乱する;彼は誤る、彼は欺かれる、彼は惑わされる

देहिनोऽस्मिन् यथा देहे कौमारं यौवनं जरा ।
तथा देहान्तरप्राप्तिर्धीरस्तत्र न मुह्यति ॥ १३ ॥

dehino’smin yathā dehe kaumāraṁ yauvanaṁ jarā |
tathā dehāntaraprāptirdhīrastatra na muhyati || 13 ||
個我は、この身体において、少年期、青年期、老年期を経るように、来世には他の身体を獲得する。
そのことについて、賢者は惑わされない。

バガヴァッド・ギーター第2章第12節

न त्वेवाहं जातु नासं
na tvevāhaṁ jātu nāsaṁ
ナ トヴェーヴァーハン ジャートゥ ナーサン
私は未だかつて存在しなかったことはない

na【否定辞】〜でない
tu【接続詞】しかし、一方(虚辞としても使用)
eva【副詞】実に、真に(強意を表す。しばしば虚辞として使用)
aham【単数・主格、一人称代名詞 mad】私は
jātu【副詞】全然、確かに;少なくとも、概して、おそらく;今まで、かつて
→na … jātu:決して〜せず、少なくとも〜せず
na【否定辞】〜でない
āsam【一人称・単数・パラスマイパダ・過去 √as】私はあった、私は存在した

न त्वं नेमे जनाधिपाः ।
na tvaṁ neme janādhipāḥ |
ナ トヴァン ネーメー ジャナーディパーハ
あなたも、これらの王たちも

na【否定辞】〜でない
tvam【単数・主格、二人称代名詞 tvad】あなたは
na【否定辞】〜でない
ime【男性・複数・主格、指示代名詞 idam】これらは
janādhipās【男性・複数・主格】王たちは、支配者たちは
→na … na …:〜も、〜もない

न चैव न भविष्यामः
na caiva na bhaviṣyāmaḥ
ナ チャイヴァ ナ バヴィッシャーマハ
そして、私たちは存在しなくなることはない

na【否定辞】〜でない
ca【接続詞】そして、また、〜と
eva【副詞】実に、真に(強意を表す。しばしば虚辞として使用)
na【否定辞】〜でない
bhaviṣyāmas【一人称・複数・パラスマイパダ・未来 √bhū】私たちはあるだろう、私たちは存在するだろう

सर्वे वयम् अतः परम् ॥
sarve vayam ataḥ param ||
サルヴェー ヴァヤム アタハ パラム
私たちすべては、これから先

sarve【男性・複数・主格】すべては、一切は
vayam【複数・主格、一人称代名詞 asmad】私たちは
atas【副詞】これより、ここより
param【副詞】それから、さらに、その後
→atas param:これから先、これから後

न त्वेवाहं जातु नासं न त्वं नेमे जनाधिपाः ।
न चैव न भविष्यामः सर्वे वयमतः परम् ॥ १२ ॥

na tvevāhaṁ jātu nāsaṁ na tvaṁ neme janādhipāḥ |
na caiva na bhaviṣyāmaḥ sarve vayamataḥ param || 12 ||
私は未だかつて存在しなかったことはない。あなたも、ここにいる王たちもそうだ。
そして、私たちはすべて、これから先、存在しなくなることもない。

バガヴァッド・ギーター第2章第11節

श्रीभगवान् उवाच ।
śrībhagavān uvāca |
シュリーバガヴァーン ウヴァーチャ
クリシュナは語った

śrībhagavān【男性・単数・主格】栄光ある方、神聖な神、威厳ある尊者。ここではクリシュナのことを指す。
uvāca【三人称・単数・パラスマイパダ・完了 √vac】彼は言った、彼は語った

अशोच्यान् अन्वशोचस् त्वं
aśocyān anvaśocas tvaṁ
アショーチャーン アンヴァショーチャス トヴァン
あなたは嘆くべきでない人々について嘆いた

aśocyān【男性・複数・対格、未来受動分詞(動詞的形容詞、義務分詞) a√śuc】嘆くべきでない人々を、悲しむべきでない人々を
anvaśocas【二人称・単数・パラスマイパダ・過去 anu√śuc】あなたは嘆いた、あなたは悲しんだ
tvam【単数・主格、二人称代名詞 tvad】あなたは

प्रज्ञावादांश्च भाषसे ।
prajñāvādāṁśca bhāṣase |
プラジュニャーヴァーダーンシュチャ バーシャセー
しかも、あなたは一見聡明な言葉を語る

prajñā【女性】識別、判断、知能、了解;智慧、知
vādān【男性・複数・対格】談話を、発言を、陳述を;〜に関する言葉を
→prajñāvādān【男性・複数・対格、限定複合語】智慧の言葉を;一見聡明な言葉を、智慧のあるような言葉を、分別あるかのような言葉を
ca【接続詞】そして、また、〜と
bhāṣase【二人称・単数・アートマネーパダ・現在 √bhāṣ】あなたは語る、あなたは話す

गतासून् अगतासूंश्च
gatāsūn agatāsūṁśca
ガタースーン アガタースーンシュチャ
死者たちや生者たちを

gatāsūn【男性・複数・対格】死者たちを、死人たちを
agatāsūn【男性・複数・対格】生者たちを
ca【接続詞】そして、また、〜と

नानुशोचन्ति पण्डिताः ॥
nānuśocanti paṇḍitāḥ ||
ナーヌショーチャンティ パンディターハ
賢者たちは嘆かない

na【否定辞】〜でない
anuśocanti【三人称・複数・パラスマイパダ・現在 anu√śuc】彼らは嘆く、彼らは悲しむ
paṇḍitās【男性・複数・主格】学者たちは、学問のある人たちは、賢い人たちは、師たちは

श्रीभगवान् उवाच ।
अशोच्यानन्वशोचस्त्वं प्रज्ञावादांश्च भाषसे ।
गतासूनगतासूंश्च नानुशोचन्ति पण्डिताः ॥ ११ ॥

śrībhagavān uvāca |
aśocyānanvaśocastvaṁ prajñāvādāṁśca bhāṣase |
gatāsūnagatāsūṁśca nānuśocanti paṇḍitāḥ || 11 ||
クリシュナは語りました。
あなたは嘆くべきでない人々について嘆く。しかも、一見聡明な言葉を語る。
賢者は、死者や生者について嘆くことはない。

バガヴァッド・ギーター第2章第10節

तम् उवाच हृषीकेशः
tam uvāca hṛṣīkeśaḥ
タム ウヴァーチャ フリシーケーシャハ
クリシュナは彼に言った

tam【男性・単数・対格、指示代名詞 tad】彼に
uvāca【三人称・単数・パラスマイパダ・完了 √vac】彼は言った、彼は語った
hṛṣīkeśas【男性・単数・主格】フリシーケーシャは。クリシュナの別名。名前は「感官の主」〔hṛṣīka(感官) + iśa(主)〕、あるいは「髪を逆立てている者」〔hṛṣī(逆立てている) + keśa(髪)〕の意。

प्रहसन्न् इव भारत ।
prahasann iva bhārata |
プラハサン イヴァ バーラタ
微笑むかのように、バラタの子孫よ

prahasant【男性・単数・主格、現在分詞 pra√has】笑って、微笑して
iva【副詞】〜のように、〜と同様に、言わば
bhārata【男性・単数・呼格】バラタの子孫よ。ここでは状況を報告するサンジャヤから、ドリタラーシュトラ王への呼びかけとなる。

सेनयोर् उभयोर् मध्ये
senayor ubhayor madhye
セーナヨール ウバヨール マッディエー
両軍の中間において

senayos【女性・両数・属格】二つの軍隊の、二つの軍勢の
ubhayos【女性・両数・属格】両方の、双方の
madhye【中性・単数・処格】中央において、中心において、中間において

विषीदन्तम् इदं वचः ॥
viṣīdantam idaṁ vacaḥ ||
ヴィシーダンタム イダン ヴァチャハ
沈み込んでいる、この言葉を

viṣīdantam【男性・単数・対格、現在分詞 vi√sad】絶望している、落胆している、失望している、沈み込んでいる、疲れ切っている
idam【中性・単数・対格、指示代名詞 idam】これを
vacas【中性・単数・対格】言葉を、話を;忠告を、助言を

तमुवाच हृषीकेशः प्रहसन्निव भारत ।
सेनयोरुभयोर्मध्ये विषीदन्तमिदं वचः ॥ १० ॥

tamuvāca hṛṣīkeśaḥ prahasanniva bhārata |
senayorubhayormadhye viṣīdantamidaṁ vacaḥ || 10 ||
大王よ、クリシュナは微笑むかのように、
両軍の間で沈み込む彼に、次の言葉を語りました。

バガヴァッド・ギーター第2章第9節

संजय उवाच ।
saṁjaya uvāca |
サンジャヤ ウヴァーチャ
サンジャヤは言った

saṁjayas【男性・単数・主格】サンジャヤは。ドリタラーシュトラ王に仕える吟唱詩人。
uvāca【三人称・単数・パラスマイパダ・完了 √vac】彼は言った、彼は語った

एवम् उक्त्वा हृषीकेशं
evam uktvā hṛṣīkeśaṁ
エーヴァム ウクトヴァー フリシーケーシャン
クリシュナにこのように言って

evam【副詞】このように、こんなふうに、そんなふうに
uktvā【絶対分詞 √vac】言って、話して
hṛṣīkeśam【男性・単数・対格】フリシーケーシャに。クリシュナの別名。名前は「感官の主」〔hṛṣīka(感官) + iśa(主)〕、あるいは「髪を逆立てている者」〔hṛṣī(逆立てている) + keśa(髪)〕の意。

गुडाकेशः परंतप ।
guḍākeśaḥ paraṁtapa |
グダーケーシャハ パランタパ
敵を悩ます者アルジュナは、

guḍākeśas【男性・単数・主格】グダーケーシャは。アルジュナの別名。名前は「濃い毛髪の者」〔guḍā(濃い) + keśa(髪)〕の意。
(「睡眠の主」guḍāka(睡眠) + iśa(主)ととられる場合があるが、guḍākeśaを説明するための当て字とされ、アルジュナが睡眠の主である記述は古典で見あたらないといわれる)
paraṁtapa【男性・単数・呼格】敵を悩ます者よ。アルジュナのこと。paraṁtapasとして主格が採用される場合がある。また別の解釈では、サンジャヤからドリタラーシュトラ王への呼びかけとみる場合がある。

न योत्स्य इति गोविन्दम्
na yotsya iti govindam
ナ ヨーツシャ イティ ゴーヴィンダム
「私は戦わない」と、クリシュナに

na【否定辞】〜でない
yotsye【一人称・単数・アートマネーパダ・未来 √yudh】私は戦うだろう、私は対戦するだろう
iti【副詞】〜と、〜ということ、以上(しばしば引用句の後に置かれる)
govindam【男性・単数・対格】ゴーヴィンダに。クリシュナの別名。名前は「牛飼いの主」の意。

उक्त्वा तूष्णीं बभूव ह ॥
uktvā tūṣṇīṁ babhūva ha ||
ウクトヴァー トゥーシュニーン バブーヴァ ハ
言って、彼は沈黙した

uktvā【絶対分詞 √vac】言って、話して
tūṣṇīm【副詞】黙して、沈黙して
babhūva【三人称・単数・パラスマイパダ・完了 √bhū】彼は〜となった、彼は〜した
ha【不変化辞】もちろん、確かに(先行する語を強調する付加語);詩の終わりに用いられる意味を持たない虚辞

संजय उवाच ।
एवमुक्त्वा हृषीकेशं गुडाकेशः परंतप ।
न योत्स्य इति गोविन्दमुक्त्वा तूष्णीं बभूव ह ॥ ९ ॥

saṁjaya uvāca |
evamuktvā hṛṣīkeśaṁ guḍākeśaḥ paraṁtapa |
na yotsya iti govindamuktvā tūṣṇīṁ babhūva ha || 9 ||
サンジャヤは言いました。
アルジュナはクリシュナにこのように言うと、
クリシュナに「私は戦わない」と告げて、沈黙しました。

※この節から、シュローカの韻律に戻ります。第2章5節〜8節のトリシュトゥブの韻律は、アルジュナの苦悩を強調し、クリシュナの教説へと導く場面展開の役割を担っています。

バガヴァッド・ギーター第2章第8節

न हि प्रपश्यामि ममापनुद्याद्
na hi prapaśyāmi mamāpanudyād
ナ ヒ プラパッシャーミ ママーパヌッディヤード
なぜならば私は分からない、追い払われるべき私の

na【否定辞】〜でない
hi【不変化辞】なぜならば、〜のために;真に、確かに、実に
prapaśyāmi【一人称・単数・パラスマイパダ・現在 pra√paś】私は知る;私は予知する;私は判断する;私は見る
mama【単数・属格、一人称代名詞 mad】私の
apanudyāt【三人称・単数・パラスマイパダ・祈願法 apa√nud】それは追い払われるべき、それは追放されるように、それは取り除かれるだろう

यच्छोकम् उच्छोषणम् इन्द्रियाणाम् ।
yacchokam ucchoṣaṇam indriyāṇām |
ヤッチョーカム ウッチョーシャナム インドリヤーナーム
感官を涸らす悲しみを

yat【中性・単数・対格、関係代名詞 yad】apanudyātを受ける関係代名詞。
śokam【男性・単数・対格】苦悩を、悲しみを、悲哀を、苦痛を
ucchoṣaṇam【男性・単数・対格】乾かす、乾燥させる、涸らす
indriyāṇām【男性・複数・属格】感官の;感覚の;活力の、精力の

अवाप्य भूमावसपत्नं ऋद्धं
avāpya bhūmāvasapatnaṁ ṛddhaṁ
アヴァーピヤ ブーマーヴァサパットナン リッダン
地上において、比類ない繁栄を獲得して

avāpya【絶対分詞 ava√āp】獲得して、得て、入手して
bhūmau【女性・単数・処格】大地において、地上において
asapatnam【中性・単数・対格】比類のない、並びない、競争者のない
ṛddham【中性・単数・対格】繁栄を、安寧を、幸運を;富を

राज्यं सुराणाम् अपि चाधिपत्यम् ॥
rājyaṁ surāṇām api cādhipatyam ||
ラージャン スラーナーム アピ チャーディパティヤム
王国を、さらに神々の支配権をも

rājyam【中性・単数・対格】王国を、王権を、王位を
surāṇām【男性・複数・属格】神々の
api【接続詞】〜もまた、さえも、さらに
ca【接続詞】そして、また、〜と
→api ca:さらにまた、同様に、〜も〜も
ādhipatyam【中性・単数・対格】主権を、支配権を、王権を

न हि प्रपश्यामि ममापनुद्याद् यच्छोकमुच्छोषणमिन्द्रियाणाम् ।
अवाप्य भूमावसपत्नंऋद्धं राज्यं सुराणामपि चाधिपत्यम् ॥ ८ ॥

na hi prapaśyāmi mamāpanudyād yacchokamucchoṣaṇamindriyāṇām |
avāpya bhūmāvasapatnaṁṛddhaṁ rājyaṁ surāṇāmapi cādhipatyam || 8 ||
なぜなら、地上において、比類なき繁栄の王国を得ても、また神々の支配権を手にしても、
感官を涸らす私の悲しみを追い払う方法が、私には分からないのです。

バガヴァッド・ギーター第2章第7節

कार्पण्यदोषोपहतस्वभावः
kārpaṇyadoṣopahatasvabhāvaḥ
カールパンニャドーショーパハタスヴァバーヴァハ
哀憐の情に本性を曇らされ

kārpaṇya【中性】同情、悲哀、哀憫、哀憐;心貧しいこと、惨めなこと;貧乏、貧困
doṣa【男性】欠陥、欠点、短所;汚点、劣等な状態、悪い性質;害、損傷、損害;罪、悪、罪過
upahata【過去受動分詞 upa√han】苦しめられた、攻撃された、傷つけられた;だめにされた、汚された、曇らされた
svabhāvas【男性・単数・主格】固有のあり方、生まれつきの性質、素質、本性
→kārpaṇyadoṣopahatasvabhāvas【男性・単数・主格、所有複合語】悲哀の罪過によって本性を傷つけられた、哀憐の性質に本性を汚された

पृच्चामि त्वां धर्मसंमूढचेताः ।
pṛccāmi tvāṁ dharmasaṁmūḍhacetāḥ |
プリッチャーミ トヴァーン ダルマサンムーダチェーターハ
義について混乱した心の私はあなたに尋ねる

pṛccāmi【一人称・単数・パラスマイパダ・現在 √prach】私は尋ねる、私は質問する、私は聞く
tvām【単数・対格、二人称代名詞 tvad】あなたに
dharma【男性】秩序、慣例、習慣、風習、法則、既定;規則;義務;得、美徳、善行;宗教;教説;正義;公正;法律;性質、性格、本質、属性
saṁmūḍha【過去受動分詞 sam√muh】混乱した、困惑した、惑わされた
cetās【中性・単数・主格、形容詞】心、精神、意志;感官
→dharmasaṁmūḍhacetās【中性・単数・主格、所有複合語】正義について混乱した心の、心は義務に関して惑わされた

यच्छ्रेयः स्यान् निश्चितं ब्रूहि तन् मे
yacchreyaḥ syān niścitaṁ brūhi tan me
ヤッチュレーヤハ シヤーン ニシュチタン ブルーヒ タン メー
どちらがよいだろうか、それを私にはっきりと告げよ

yat【中性・単数・主格、関係代名詞 yad】前節の「私たちが勝つべきか、あるいは彼らが私たちに勝つべきか」を受ける関係代名詞。
śreyas【中性・単数・対格、比較級】より良い、より優れた、より幸せな
syāt【三人称・単数・パラスマイパダ・願望法 √as】それは〜であるべき、それは〜であろう
niścitam【副詞】決定的に、確実に、疑いなく
brūhi【二人称・単数・パラスマイパダ・命令法 √brū】言え、語れ、告げよ
tat【中性・単数・対格、指示代名詞 tad】それを
me【単数・為格、一人称代名詞(附帯形) mad】私に、私のために

शिष्यस् ते ऽहं शाधि मां त्वां प्रपन्नम् ॥
śiṣyas te ‘haṁ śādhi māṁ tvāṁ prapannam ||
シッシャス テー ハン シャーディ マーン トヴァーン プラパンナム
私はあなたの弟子、あなたのおみ足にひざまずく私を導かれよ

śiṣyas【男性・単数・主格】生徒、弟子、門弟、学生
te【単数・属格、二人称代名詞 tvad】あなたの
aham【単数・主格、一人称代名詞 mad】私は
śādhi【二人称・単数・パラスマイパダ・命令法 √śās】導け、教えよ、教示せよ;指示せよ、命令せよ;正せ、矯正せよ、罰せよ
mām【単数・対格、一人称代名詞 mad】私に、私を
tvām【単数・対格、二人称代名詞 tvad】あなたに
prapannam【単数・対格、過去受動分詞 pra√pad】達した、到った、来た;人の足にひざまずいた;嘆願する

कार्पण्यदोषोपहतस्वभावः पृच्चामि त्वां धर्मसंमूढचेताः ।
यच्छ्रेयः स्यान्निश्चितं ब्रूहि तन्मे शिष्यस्तेऽहं शाधि मां त्वां प्रपन्नम् ॥ ७ ॥

kārpaṇyadoṣopahatasvabhāvaḥ pṛccāmi tvāṁ dharmasaṁmūḍhacetāḥ |
yacchreyaḥ syānniścitaṁ brūhi tanme śiṣyaste’haṁ śādhi māṁ tvāṁ prapannam || 7 ||
哀憐の情に本性を曇らされ、義について心惑う私はあなたにお訊きします。
どちらがよいのか、私にはっきりと告げてください。
私はあなたの弟子です。あなたのおみ足にひざまずく私を教え導いてください。

バガヴァッド・ギーター第2章第6節

न चैतद् विद्मः कतरन् नो गरीयो
na caitad vidmaḥ kataran no garīyo
ナ チャイタド ヴィドマハ カタラン ノー ガリーヨー
そして私たちはこれを知らない、私たちにとってどちらがより重要なのか

na【否定辞】〜でない
ca【接続詞】そして、また、〜と
etat【中性・単数・対格、指示代名詞 etad】これを
vidmas【一人称・複数・パラスマイパダ・現在 √vid】私たちは知る、私たちは理解する、私たちは分かる
katarat【中性・両数・対格、疑問代名詞 katara】(二者の中の)誰か、いずれか、どれか
nas【属格・複数、一人称代名詞(附帯形) asmad】私たちにとって
garīyas【中性・単数・対格、比較級】より尊い、より価値がある、より重要な

यद् वा जयेम यदि वा नो जयेयुः ।
yad vā jayema yadi vā no jayeyuḥ |
ヤッド ヴァー ジャイェーマ ヤディ ヴァー ノー ジャイェーユフ
私たちが勝つべきか、あるいは彼らが私たちに勝つべきか

yad【関係代名詞】〜であるもの
vā【接続詞】あるいは
→yad vā:〜かどうか、あるいは
jayema【一人称・複数・パラスマイパダ・願望法 √ji】私たちが勝つべき、私たちが征服すべき
yadi【接続詞】もし
vā【接続詞】あるいは
→yadi vā:〜かどうか、あるいは
nas【対格・複数、一人称代名詞(附帯形) asmad】私たちに
jayeyus【三人称・複数・パラスマイパダ・願望法 √ji】彼らが勝つべき、彼らが征服すべき

यान् एव हत्वा न जिजीविषामस्
yān eva hatvā na jijīviṣāmas
ヤーン エーヴァ ハットヴァー ナ ジジーヴィシャーマス
彼らを殺して、私たちは生きたいとは思わない

yān【男性・複数・対格、関係代名詞 yad】彼らを
eva【副詞】実に、真に(強意を表す。しばしば虚辞として使用)
hatvā【絶対分詞 √han】殺して、破壊して、始末して
na【否定辞】〜でない
jijīviṣāmas【一人称・複数・パラスマイパダ・現在、意欲活用 √jīv】私たちは生きたい、私たちは生きたいと願う

ते ऽवस्थिताः प्रमुखे धार्तराष्ट्राः ॥
te ‘vasthitāḥ pramukhe dhārtarāṣṭrāḥ ||
テー ヴァスティターハ プラムケー ダールタラーシュトラーハ
そのドリタラーシュトラの息子たちが、面前において立っている

te【男性・複数・主格、指示代名詞 tad】それらは、彼らは
avasthitās【男性・複数・主格、過去受動分詞 ava√sthā】立っている、立ち並ぶ、配陣した
pramukhe【中性・単数・処格】面前において、目前において;〜に面して、〜に対して、〜の前に
dhārtarāṣṭrās【男性・複数・主格】ドリタラーシュトラの一族が、ドリタラーシュトラの息子たちが

न चैतद्विद्मः कतरन्नो गरीयो यद्वा जयेम यदि वा नो जयेयुः ।
यानेव हत्वा न जिजीविषामस्तेऽवस्थिताः प्रमुखे धार्तराष्ट्राः ॥ ६ ॥

na caitadvidmaḥ kataranno garīyo yadvā jayema yadi vā no jayeyuḥ |
yāneva hatvā na jijīviṣāmaste’vasthitāḥ pramukhe dhārtarāṣṭrāḥ || 6 ||
そして、私たちにとってどちらがよいのか分かりません。
私たちが勝つべきなのか、あるいは彼らが私たちに勝つべきなのか――
彼らを殺してまで、私たちは生きたいとは思いません。
そのドリタラーシュトラの息子たちが、目の前に立っています。

※この節の1行目、2行目には、トリシュトゥブの韻律には珍しい字余りが見られます。

バガヴァッド・ギーター第2章第5節

गुरून् अहत्वा हि महानुभावान्
gurūn ahatvā hi mahānubhāvān
グルーン アハットヴァー ヒ マハーヌバーヴァーン
実に、威厳ある師たちを殺さないで

gurūn【男性・複数・対格】尊敬すべき人たちを、年長の人たちを、師たちを
ahatvā【絶対分詞 a√han】殺さないで、破壊しないで、始末しないで
hi【不変化辞】なぜならば、〜のために;真に、確かに、実に
mahānubhāvān【男性・複数・対格】力強い、威厳ある、高徳の、高貴な

श्रेयो भोक्तुं भैक्ष्यमपीह लोके ।
śreyo bhoktuṁ bhaikṣyamapīha loke |
シュレーヨー ボークトゥン バイクシャマピーハ ローケー
この世で物乞いをして生きる方がよい

śreyas【中性・単数・対格、比較級】より良い、より優れた、より幸せな
bhoktum【不定詞 √bhuj】食べること、飲むこと、楽しむこと
bhaikṣyam【中性・単数・対格】施しもので生きること、物乞いをすること、乞食をすること
api【接続詞】〜もまた、さえも、さらに
iha【副詞】ここで[へ・に];この世で、地上で
loke【男性・単数・処格】世界において、地上において

हत्वार्थकामांस् तु गुरून् इहैव
hatvārthakāmāṁs tu gurūn ihaiva
ハットヴァールタカーマーンス トゥ グルーン イハイヴァ
一方、役に立とうとする師たちを殺せば、この世で

hatvā【絶対分詞 √han】殺して、破壊して、始末して
artha【男性】財産、富、金;褒美;利得
kāmān【男性・複数・対格】欲望、願望、欲求;愛、享楽
→arthakāmān【男性・複数・対格、所有複合語】富を希う、有用になることを望む、目的を果たそうとする;富と享楽を
tu【接続詞】しかし、一方
gurūn【男性・複数・対格】尊敬すべき人たちを、年長の人たちを、師たちを
iha【副詞】ここで[へ・に];この世で、地上で
eva【副詞】実に、真に(強意を表す。しばしば虚辞として使用)

भुञ्जीय भोगान् रुधिरप्रदिग्धान् ॥
bhuñjīya bhogān rudhirapradigdhān ||
ブンジーヤ ボーガーン ルディラプラディグダーン
私は血に染まった享楽を味わうだろう

bhuñjīya【一人称・単数・アートマネーパダ・願望法 √bhuj】私は食べるだろう、私は食べるべき、私は食べるかもしれない
bhogān【男性・複数・対格】享楽を、快楽を、歓喜を;財産を
rudhira【形容詞】赤い、血の;血のように赤い、血で赤く染まった
pradigdhān【男性・複数・対格】〜で塗られた、覆われた、染まった
→rudhirapradigdhān【男性・複数・対格、限定複合語】血で塗られた、血で汚された、血をまとう

गुरूनहत्वा हि महानुभावान् श्रेयो भोक्तुं भैक्ष्यमपीह लोके ।
हत्वार्थकामांस्तु गुरूनिहैव भुञ्जीय भोगान् रुधिरप्रदिग्धान् ॥ ५ ॥

gurūnahatvā hi mahānubhāvān śreyo bhoktuṁ bhaikṣyamapīha loke |
hatvārthakāmāṁstu gurūnihaiva bhuñjīya bhogān rudhirapradigdhān || 5 ||
実に、威厳ある師たちを殺さないで、この世で物乞いをして生きる方が幸せです。
役に立とうとする師たちを殺せば、私はこの世で、血に染まった享楽を味わうことになるでしょう。

※第2章第5〜8節は、トリシュトゥブ(triṣṭubh)と呼ばれる、11音節×4行からなる韻律になります。
バガヴァッド・ギーターの大部分は、8音節×4行からなるシュローカ(śloka)の韻律で構成されます。