大地が潤う神聖なシュラーヴァナ月において深い祈りが捧げられるシヴァ神は、インドの各地においてさまざまな姿で崇められます。
インド中部のジャールカンド州においては、医師としてのシヴァ神が崇められる寺院があります。
その寺院は、インドにおいてもっとも重要とされる12のリンガムが祀られた寺院のひとつでもあり、シュラーヴァナ月においては多くの巡礼者が訪れる聖地です。
医師としてのシヴァ神は、ヴァイディヤナータという御名で崇められます。
シヴァ神がヴァイディヤナータとして崇められるようになった理由には、さまざまな神話が伝わります。
そのひとつに、魔王として数々の戦いを繰り広げた10の頭を持つラーヴァナとの神話があります。
ラーヴァナは、シヴァ神への大変な苦行を行ったことで知られる存在です。
かつて、10の頭をひとつずつ切り落としながら、シヴァ神の礼拝を行ったことがありました。
その熱心な思いに心を打たれたシヴァ神は、ラーヴァナの傷を癒します。
それ故、シヴァ神は医師の神という意味を持つヴァイディヤナータという名前で崇められるようになったといわれます。
ラーヴァナが切り落とした10の頭は、5つの知覚器官と、5つの行為器官であると伝えられてきました。
それは、目・耳・鼻・舌・皮膚(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)の5つの知覚器官、そして、口・手・足・生殖器官・排泄器官・(発声・操作・移動・生殖・排泄)の5つの行為器官にあたります。
10の頭は、その感覚や行為を通じて、私たちの心を支配する悪質な感情や思考の数々ともいわれます。
肉体をまとい、感覚や行為に翻弄される私たちは、いつラーヴァナになり変わるかわかりません。
しかし、シヴァ神は泥棒や邪鬼といった社会が悪と見なすような存在にも祝福を与える慈悲深い神です。
そんなシヴァ神に心を定め、沸き起こる悪質を切り落としていく時、私たちは常に癒され、神性を高めながら日々を歩むことができるはずです。
2020年のシュラーヴァナ月は、7月6日から8月3日です(地域によっては7月21日から8月19日となります)。
1年の中でとりわけ神聖な月とされるこの時、これまでに以上にシヴァ神と向き合い、清らかな道を歩む努力を心がけたいと感じます。
皆様にもシヴァ神の大きな恩寵がありますように心よりお祈り申し上げます。
(文章:ひるま)
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