ラーマ神が魔王のラーヴァナに打ち勝った日として崇められるダシャハラー。
悪に対する善の勝利を象徴するこの日は、インドの各地で盛大な祝福が行われる時です。
ラーヴァナを倒すラーマ神の歩みは、現代でも人々から広く愛されるラーマーヤナにおいて壮大に綴られています。
そこには、私たちの歩みを正しく導く教えが随所に溢れています。
ラーマ神に勝利をもたらす影の立役者となった存在に、ヴィビーシャナの存在があります。
ヴィビーシャナは、魔王であるラーヴァナの弟でありながら、ダルマを守る心の清い者でした。
ラーマ神の妃であるシーター女神を誘拐した兄のラーヴァナに対しては非難の声を上げ、シーター女神を救い出すために奮闘します。
そして、ラーマ神を勝利に導く重要な役割を努め上げました。
善の質であるラーマ神と、悪の質であるラーヴァナは、誰しもの内に存在しているといわれます。
そんなラーマ神とラーヴァナが繰り広げる戦いは、私たちの内なる世界で生じる葛藤に重なります。
肉体をまとい揺れ動く性質の心を持つ私たちは、時に悪の質が優勢になり、ラーヴァナに支配されることも少なくありません。
そうして道を誤ってしまうことも往々にあります。
そんな時は、悪の質の中でも、自分自身を律するための声を上げるヴィビーシャナの質を高める必要があります。
ヴィビーシャナは、やがて7人いるチランジーヴィーのひとりに数えられる存在になりました。
チランジーヴィーは、ヒンドゥー教において不死者として崇められ、カリユガの時代の最後まで、今もなお、生き続けている存在であると伝えられます。
ラーマの質とラーヴァナの質が誰しもの内に存在するように、私たちの内にはヴィビーシャナの質も存在しています。
そんなヴィビーシャナの質が自分自身の内で生き続ける時、常に悪を倒す力を得て、正しい道を歩み続けることができるはずです。
悪に対する善の勝利を象徴するダシャハラーを盛大に祝福することができるように、自分自身の内なる世界を見つめ直したいと感じます。
(文章:ひるま)
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