バガヴァド・ギーター:第二章・第11節 ①
クリシュナは語った。
貴殿は嘆くに当たらない人間に関しても嘆く。しかも、一見聡明な言葉を語る。
しかし、賢者は、死者や生者について嘆くことはない。
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第二章では10節迄は、ほぼアルジュナの葛藤と嘆きがしつこく繰り返します。そしてこの11節でようやく、クリシュナの二言目が発せられます。
この11節の驚くべき示唆に富んだテーマは、「嘆くに当たらない人間」「一見聡明な言葉」「賢者は生死を嘆かない」という、この節の全ての文言に見られます。
ただ、この「三つのテーマ」が互いにきわめて密接な関係にあり、その順番を取り違えるとトンでもない誤解・誤った解釈に至ってしまうことは重々注意すべきです。
おの「三つのテーマ」は、総合的・俯瞰的に、「アルジュナの常識的な解釈に対し、クリシュナは宇宙原理で以ってそれを一蹴している」に重きを見出だすべきでしょう。
また「三つのテーマ」それぞれを格言に至らしめるには、それぞれの不偏的な「ものさし(判断基準)」を読み取らねばなりません。
「嘆くに当たらない人間」は、誰のどんな物差しによって「嘆く価値もない」とされるのか?
クリシュナの価値観か? 宇宙原理・真理照らしてか?それとも賢者の物差しで計ってなのか? それともアルジュナ達、人間の中の、権力を争い国と伝統を存続させる命題を抱く者たちにとってなのか?
「一見聡明な言葉」は、流石にクリシュナにとって、宇宙原理にとって、賢者にとって、はないでしょう。しかし、「どのような人間が聡明と感じるのか?」には幅があります。
「賢者は生死を嘆かない」は、物差しの所在・価値観の次元を「賢者」に特定しています。しかし「賢者」という存在は、果たして「どのような物差し」によって認定されるのでしょうか?
ある意味、逆説的に
「静止を嘆かない者=賢者」という解釈も出来、古代インドの文言には、そのような言い回しは多く見られます。
しかし、ここで重要なことは、シーターラーマさんの詳細なサンスクリット語の解説で明示されているように、本節に於ける「賢者」は、「Pandit(学者、ドクター、専門家、ヒンドゥー教徒の音楽の名手にも冠する)」であり「聖者(スワミやバグワン、リシ)」などではないことです。
私は、「みっつのテーマ」のひとつ「一見聡明な言葉」に、とてつもなく驚かされました。
これは、
「一見聡明な言葉」の他に、「一見優し気な言葉」「一見正しい言葉」「一見乱暴な言葉」に始まり、「一見立派な姿」「一見みすぼらしい姿」「一見立派な仕事」「一見卑しい様子」などなど、あらゆる事象に通じます。
つまり、その時々・時代の「通俗的で常識的な価値観(ものさし)」に於ける「一見」を意味しているのです。さすれば「嘆くに当たらない」は、おのずと「非凡・非常識な価値観」で判断した場合となります。しかしながら、その価値観は、必ずしも「賢者の価値観」と同一ではないのです。
しかし、いずれにしても、この現代社会にも完璧に通じることをクリシュナが述べた。
しかし、それは「宇宙真理」を述べたのではなく、「凡人から賢者に至る、人間社会の問題性」として述べていることに驚きを禁じ得ません。
従って、バガワドギータそのものも、クリシュナの言葉そのものも、やはりこの新連載の冒頭で私が述べましたように、極めて人間的・人間目線・価値観に沿いながらも、その過ちを説かんとしている、「人間世界・人間人生の教本」としての「聖典」である、ということが明白になります。
言い換えれば、「通俗を認めながらも、通俗の中に在ろうとも、精神性を下げてはならない」という厳しい教えである、ということです。
(つづく)
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何時も最後までご高読下さってありがとうございます。
バガヴァド・ギータの詳しい語彙の解説は、シーターラーマさんのブログで是非、学んで下さい。
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(文章:若林 忠宏)
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