シヴァ神の化身した恐ろしい姿に、バイラヴァと呼ばれる姿があります。
バイラヴァ神は、カーラバイラヴァ神としての姿が有名ですが、この他にもさまざまな姿や名前で崇められます。
その中に、バトゥカ・バイラヴァという姿があります。
バトゥカバイラヴァ神は、恐ろしいバイラヴァ神の中でも、慈悲深い神格として崇められます。
このバトゥカには、男の子という意味があります。
その名前の通り、バトゥカ・バイラヴァ神は5歳の子どもの姿で崇められます。
バトゥカ・バイラヴァ神が子どもの姿で生まれた背景には、ある神話が伝わります。
大昔、アーパドゥという悪魔が世界を恐怖に陥れていました。
アーパドゥは、ブラフマー神への苦行によって力をつけ、過去、現在、未来といった、いかなる時間枠の中でも倒されないという恩恵を手にしていました。
時を操るアーパドゥを倒すことは不可能のように見えます。
そんなアーパドゥの悪行によって苦しむ世界を見たシヴァ神は、怒りに震え、第3の目から永遠に燃える炎を生み出します。
その炎は、永遠の若さを持つ5歳の子どもの姿になり、バトゥカ・バイラヴァ神が生まれました。
そして、バトゥカ・バイラヴァ神は時間を止めると、アーパドゥを倒したと伝えられます。
シヴァ神は、マハーカーラ(偉大な時)としても讃えられるように、時を超越した存在として崇められてきました。
一方で、始まりがあり、終わりがある肉体を持って生まれた私たちは、移ろう時の中で心を乱され、自分自身の本質である永遠の魂を見失う瞬間が多くあります。
そこでは、不安と恐怖に苛まれることも少なくありません。
そうして経験する多くの苦しみは、まるでアーパドゥの支配下にある世界のようです。
シヴァ神は、アーパドゥに支配され苦しむ世界を見て、永遠の若さを持つ5歳の子どもの姿になり世界を救いました。
そうして生まれたバトゥカ・バイラヴァ神への祈りは、私たちに時という悪魔を倒す力を与えてくれるに違いありません。
その時、私たちは今という瞬間の中で、永遠の魂という自分自身の本質に気づくことができるはずです。
(文章:ひるま)
※バトゥカ・バイラヴァ神の生まれはこの他にも異なる神話が伝えられます。
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