ヴィシュヌ神が化身となって倒した悪の数々は、私たちの内なる世界にもふとした瞬間にその姿を現すものです。
これらの悪の存在は、かつてはヴァイクンタの入り口を守る2人の門番であったと伝えられます。
ヴァイクンタは、天国にあるヴィシュヌ神の住処です。
その2人の門番は、ジャヤとヴィジャヤと呼ばれていました。
ある時、ブラフマー神の息子として知られる4人のクマーラがヴァイクンタを訪れます。
4人のクマーラは子どもの姿でありながらも、偉大な賢者として崇められる存在です。
しかし、ジャヤとヴィジャヤはその4人のクマーラに気がつかず、ヴァイクンタへ入ることを許しませんでした。
すると、その無知により、ジャヤとヴィジャヤは4人のクマーラから呪いをかけられてしまいます。
その呪いは、ヴィシュヌ神の敵として3回生まれ変わるか、ヴィシュヌ神の信者として7回生まれ変わるかを選ぶものでした。
7回もヴィシュヌ神と離れることに耐えられなかったジャヤとヴィジャヤは、ヴィシュヌ神の敵として3回生まれ変わることを選びます。
そして、サティヤ・ユガにおいて、ジャヤとヴィジャヤはヒラニヤークシャとヒラニヤカシプの兄弟として生まれ、ヴィシュヌ神の化身であるヴァラーハ神とナラシンハ神によってそれぞれ倒されました。
トレーター・ユガでは、ラーヴァナとクンバカルナの兄弟として生まれ、ラーマ神に倒されます。
ドヴァーパラ・ユガにおいては、シシュパーラとダンタヴァクラの兄弟として生まれ、クリシュナ神に倒されました。
そうして3回の転生を経て、現在、ジャヤとヴィジャヤは再びヴァイクンタの入り口を守っていると伝えられます。
このジャヤとヴィジャヤにまつわる神話は、さまざまに解釈されます。
たとえば、ジャヤとヴィジャヤの3回の転生は、2人で合計6回の転生を果たしたと見なされます。
その過程で倒されたのは、私たちの解脱を妨げるとされる6つの敵として捉えられます。
それは、カーマ(欲望)、クローダ(怒り)、ローバ(貪欲)、モーハ(妄想)、マダ(傲慢)、マートサルヤ(嫉妬)です。
ヒラニヤークシャは全世界に欲望(カーマ)を抱き、大地を海に沈めました。
ヒラニヤカシプは、兄を倒したヴィシュヌ神に怒り(クローダ)を抱いていました。
ラーヴァナは感覚を制御できず、貪欲(ローバ)に生きていました。
クンバカルナは睡眠や食欲に溺れ、心の状態が明確でない妄想(モーハ)に陥っていました。
シシュパーラは、クリシュナ神より優れているという傲慢さ(マダ)がありました。
ダンタヴァクラは、クリシュナ神の成功を認められず嫉妬心(マートサルヤ)に満ちていました。
こうして倒された悪の数々は、私たちの内なる世界に容易く現れるものです。
しかし、ジャヤとヴィジャヤの神話は、あらゆる存在が本来は善であるということを示しています。
悪に陥るのは無知によるものであり、その悪が強大になるとヴィシュヌ神が現れ、無知を倒します。
私たちは、常日頃からヴィシュヌ神に心を定め、無知を倒す力をつける必要があります。
そうして進歩を続けることで、やがて至高の世界に辿り着くことが可能になります。
そこでは、ジャヤとヴィジャヤのように、いつの時もヴィシュヌ神とともにいることができるに違いありません。
(文章:ひるま)
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