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雑記帳

神の側で生きること

冷え込みが和らいだ北インドの穏やかな春の夜、シヴァ神の下に人々が集い祈りを捧げる空間は、何よりも平安に満ちたものであることをいつも思い出します。個々が自己を捧げることによって生み出される静穏さを、この時ほど感じることはありません。
シヴァ神は、世界を破壊するとともに、万物に限りない恵みを与える神でもあります。世界の安寧のために、何千年と深い瞑想を続けました。このシヴァ神を讃える吉兆な夜、人々がとりわけ熱心に努める行いに断食があります。「ウパヴァーサ」とも言われる断食の行い、「ウパ」は「近く」を意味し、「ヴァーサ」は「居る」こと意味します。この時、何の側にい居るのか、それはシヴァ神の他にありません。
夜を徹した祈りやマントラの詠唱が行われるシヴァラートリでは、敬虔な人々は水すらも口にしないこのウパヴァーサを努めます。人々を苦難に巻きこむ感覚器官、それを制御する明瞭な術の一つが断食であり、その欲望のコントロールの中で、私たちは自己の統制を学びます。
個々の肉体という小さな世界の中で起きる出来事は、それが幸せだけでなく、怒りや憎しみといったものもまた波となり、世界に多くの影響を生み出します。この吉兆な夜、一人一人がシヴァ神の側にあることで、自分自身の内の悪は破壊され、清らかな心によって多くの平安が生み出される事実を、インドの地で何度も感じてきました。
欲望を制御する断食は、その過程で自我が消え失せ、崇高者であるシヴァ神の近くに人々を留まらせていきます。純粋な存在を心に定め、そこに留まる事は、自分自身の内を清めるもっともシンプルな術に他ないことを幾度となく実感させられます。
さまざまな困難や苦難が続く中でも、個々が自分自身を統制し清め、その内を平安に満たすことによって、より良い影響が社会全体を包んでいくに違いありません。そしてそれは、シヴァ神が時を超えて願うことの全てです。
人々がなぜ断食を行うのか、ウパヴァーサの意味を心に留め、私たち一人一人の努力によって、より平安な社会となることを、シヴァ神の名の下に祈りたいと感じています。皆さまにとっても吉兆な夜となりますことを心よりお祈りしております。
(文章:ひるま)

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