ヒンドゥー教でもっとも強い神格とされるハヌマーン神は、ラーマ神への深い献身によって広く知られる存在です。
ラーマ神の弟であるラクシュマナが戦場で瀕死の重傷を負った時には、命を救うサンジーヴァニーの薬草を求め、ヒマーラヤまで力強く飛び立ちました。
見つからないサンジーヴァニーの代わりに、山を丸ごと持ち上げ戦場へと持ち帰ったハヌマーン神の信仰の深さと献身の力は、計り知れないものがあります。
ハヌマーン神がサンジーヴァニーを求めてヒマーラヤに向かって飛んでいた時、羅刹王のラーヴァナが魔物のカーラネーミを送り、ハヌマーン神の進行を妨害しようとした神話が伝わります。
このハヌマーン神とカーラネーミの神話は、霊性の道を歩む私たちに重要な教訓を示します。
神話において、ラーヴァナに遣わされたカーラネーミは賢者になりすまし、途中の山に美しく穏やかな修行場を作り上げました。
ハヌマーン神がその場所を通りかかると、賢者のふりをしたカーラネーミはハヌマーン神に休息を勧めます。
適切な薬草を見つけ出すことができるように、指導をするともいいました。
そうしてカーラネーミがハヌマーン神を倒そうとした時、ハヌマーン神はカーラネーミの真意を見抜きます。
そして、ハヌマーン神はカーラネーミを倒すと、無事に薬草を手に入れラクシュマナを救ったと伝えられます。
カーラネーミの存在は、求道者の霊的な歩みに現れる障壁を象徴します。
魅力的な修行場や賢者の説得力ある言葉は、その歩みを行く私たちの心を惑わすものです。
賢者が勧めるように、休息を取ってより楽な道を選びたくなることもあるかもしれません。
しかし、ハヌマーン神の自らの使命に対する不屈な決意が揺らぐことはありませんでした。
そこには常に、ラーマ神への揺るぎない信仰がありました。
カーラネーミに見られる障壁は、霊的な歩みを阻むものに見えるものの、それは決意や集中を育む糧となるものでもあります。
ハヌマーン神は、霊性修行において欠かすことのできないヴィヴェーカ(識別力)とヴァイラーギャ(離欲)を用いてその障壁を打ち倒しました。
揺るぎない信仰に支えられた霊的な歩みを通じては、必ず困難を打ち倒す力を得ることができるということを、ハヌマーン神のカーラネーミに対する勝利が示しています。
私たちはこうした日々のさまざまな挑戦を通じて霊性を深め、真に成長していくことができます。
霊的な成長は近道では成し得ず、与えられた人生の困難に立ち向かい、乗り越えることによって達成されるということを、ハヌマーン神とカーラネーミの神話が教えてくれています。
(文章:ひるま)
※ハヌマーン神とカーラネーミの神話は、この他にも異なる形で伝えられることがあります。
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