一年のうちでも最も神聖なひと月といわれるシュラーヴァナ月は、シヴァ神を礼拝する吉兆な時であり、霊性修行を実践するための重要な期間であると伝えられます。このシュラーヴァナ月がとりわけ神聖な月とされるのは、一説に、ヒンドゥー教の天地創造神話である「乳海撹拌」が起こったからであると信じられています。
乳海撹拌は、不死の霊薬であるアムリタを得るため、神々と悪魔が協力し海を撹拌したと伝えられる神話です。この撹拌の中で、アムリタに加えさまざまな宝が生み出されるも、同時に猛毒ハラーハラも生み出されます。この猛毒から世界を救うため、ハラーハラを全て飲み干したのがシヴァ神でした。
この乳海撹拌は、私たちが歩むべく霊性修行の道のりが記された神話のようにも伝えられることがあります。それは、私たち自身が解脱というアムリタを得るために歩む道のりにも他ありません。
大きな世界に神々と悪魔が存在するように、肉体を持つ私たちの内なる世界にも、神々と悪魔が存在しています。それは、ポジティブな質と、ネガティブな質とも例えられます。
ヨーガや瞑想など、集中した霊性修行の実践は、まさに自分自身の意識という海の撹拌であり、実際にさまざまなネガティブな質がじわじわと湧き出てくることを感じたことがありました。乳海撹拌で生み出された猛毒ハラーハラは、怒りや憎しみ、恨み、疑い、妄想、失望など、私たちのあらゆるネガティブな質が集まったものに他ありません。
これらを適切に導くのがグルの存在であり、そしてそれを唯一飲み込むことができるのがシヴァ神です。シヴァ神は最高のヨーガ行者であり、偉大なグルでもあります。霊性修行の中でそこに自分自身を委ねる時、内なる世界は容易に浄化され、アムリタを生みだすことができるに違いありません。
乳海撹拌に記される一つ一つには、非常に深い意味が秘められています。グル・プールニマー、そしてシュラーヴァナ月を迎えるこの時、古代の叡智を通じ、改めて学びを深めていきたいと感じています。
(文章:ひるま)
コメント