ヨーガの練習では、その始まりや終わりにおいて、手と手を合わせる合掌のポーズを行うことが多くあります。「祈りのポーズ」、または単に「祈り」ともいわれるこの行いは、アンジャリ・ムドラーと呼ばれます。ヨーガの練習の始めにアンジャリ・ムドラーを行うと、心が落ち着き、確かな集中力を感じることができるでしょう。
しかし、ムドラーの本来の意味を理解しないと、このアンジャリ・ムドラーもヨーガの練習の一部としてしか感じられないかもしれません。なぜムドラーが重要視されるのか、その意味を理解すると、ムドラーは日常生活においても大きな意味と目的を持った行いとなります。
「印相」を示すムドラーの本来の意味には、「封印」や「印章」があります。それは、ある意味を象徴的に表現したり、さらにその意味を刻印する動きでもあります。手で示すムドラーに加え、ハタ・ヨーガでは身体で示すムドラーも実践されます。それぞれのムドラーには特定の働きと象徴があり、ムドラーを行うとそれぞれの働きと象徴が持つ意味を封印し、意識に強く働きかけます。私たちは日常生活の中で、自分自身の思考や感情を手や身体の動きで示しますが、ムドラーを学び、自分自身の姿勢、そして身振りや手振りに気づくことで、より意識的に日常生活を過ごすことができます。
基本のムドラーを以下にいくつか挙げてみます。
アンジャリ・ムドラー:閉じた蓮の花のように両手のひらを合わせます。右手と左手は、相反するものの象徴です。清浄と不浄、陰と陽、男性と女性、自分と他者、梵と我など、相反するものが一つになる感覚は、大きな安らぎをもたらします。アンジャリは感謝や敬意を意味し、ナマステーの挨拶でも実践されるように、自分と世界に平安をもたらすムドラーです。
チン・ムドラー:親指の先と人差し指の先を合わせ輪を作り、他の3本指は真っ直ぐに伸ばしたまま、手のひらを上に向けます。親指は大宇宙である梵、人差し指は小宇宙である我をあらわし、これを結びつけることによって梵我一如を象徴します。このムドラーは、広く瞑想中に実践されます。膝の上でチン・ムドラーを結ぶことで、大きな世界と深くつながることができるでしょう。
プラーナ・ムドラー:薬指の先と小指の先、親指の先を合わせ、人差し指と中指は合わせて真っすぐに伸ばし、手のひらを上に向けます。瞑想中は膝の上で、または腕を上げたままの状態で結んでも良いでしょう。エネルギーの流れを調整し、内なるエネルギーや世界のエネルギーとの結びつきを強めるムドラーです。
安らぎを感じるために、内なるエネルギーへのアクセスのために、敬意をあらわすために、世界と繋がるために、神々との結びつきを深めるために、ムドラーの実践を始めてみると良いかもしれません。まずは1日の始まりと終わりにムドラーを数分間実践し、どんな感覚を得るか見つめてみましょう。瞑想時にはその始まりと終わりにムドラーを実践することで、瞑想状態がより深まることに気がつくでしょう。
(SitaRama)
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