自然への敬意が溢れるインドの豊かな生活には、大きな世界と調和しながら霊性を育む機会が満ちています。
ヨーガの修行法のひとつであるアーサナ(ポーズ)もそのひとつです。
アーサナは生き物の数だけ存在すると伝えられるように、その多くには、動物や自然の名前がつけられています。
一説に、古代の賢者たちは動物や自然の動き観察し、その巧妙な動きを通じて、世界に調和しながら霊性を育む方法を実践していたと伝えられます。
その動きの中に、カエルのポーズを意味するマンドゥカ・アーサナがあります。
マンドゥカ・アーサナは、ヨーガの聖典であるハタラトナーヴァリーにおいて、シヴァ神が説いたとされる84のアーサナの23番目に示されています。
股関節開きのポーズとして実践されるこのポーズには、さまざまなバリエーションがあります。
そのひとつでは、まず四つん這いになり、膝を両脇に大きく広げていきます。
足首と膝と股関節が直角になるように調整し、上半身を屈めると、まさにカエルのようです。
このポーズは、第2番目のチャクラであり、仙骨の辺りにあるとされるスヴァーディシュターナ・チャクラを活性化させると伝えられてきました。
スヴァーディシュターナ・チャクラは、自らが宿る場所という意味を持ちます。
自分自身のすべてが蓄積する場所といわれ、特に股関節には、ネガティブな感情が溜まりやすいといわれてきました。
股関節がしなやかに動くと、感情が解放されることから、股関節開きのポーズは心身と向き合う重要なポーズのひとつとして実践されます。
何より、創造や生産を促す力に深く関わりがあるスヴァーディシュターナ・チャクラの活性化によって、自分自身の内で生命力の目覚めを感じることができると伝えられます。
数あるウパニシャッドの中には、マーンドゥーキヤという名を持つウパニシャッドがあります。
マーンドゥーキヤにはカエルを含め、さまざまな意味があるとされますが、異なる意識の状態が説かれるそのウパニシャッドは、カエルの姿を連想させます。
それは、冬眠から目覚め、大きく跳ね上がるカエルの姿であり、一気に最高の境地に達する状態に重なります。
このポーズを通じて、飛び跳ねる瞬間を待つかのようなカエルの姿をじっと真似る時、生命力の活性化によって、跳ね上がるように心身を目覚めさせることができるに違いありません。
カエルだけでなく、私たちを育む自然の動きには、学ぶことが非常に多くあります。
常に周囲を見渡しその動きに学びながら、豊かに生きることを努めたいと感じます。
(文章:ひるま)
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