親指は火、人差し指は風、中指は空、薬指は地、小指は水というように、私たちの5本の指には万物を構成する5大元素の象徴があります。
ヨーガで実践されるムドラーは、主にこれらの指を用いて5大元素の調和をとり、心身や周囲により良い変化をもたらすものです。
ヒンドゥー教では、創造神であるブラフマー神がこれらの5大元素を用いて宇宙を創造したと伝えられます。
ムドラーには、そんなブラフマー神の名前がつけられたムドラーの実践があります。
その名も、ブラフマー・ムドラーです。
ブラフマー・ムドラーは、ゆったりと座った姿勢で行います。
左右の手の親指を内側に折り曲げ、残りの4本の指で親指を包み込み、拳を作ります。
そして、左右の指の背(指の付け根から第2関節までの部分)を合わせます。
この手の形をお腹の辺りに押しつけるように保持し、ゆっくりと呼吸を行うのがブラフマー・ムドラーです。
ブラフマー・ムドラーでは、肩と胸が開いた状態で、拳が腹部を圧迫するため、深い完全な呼吸を行うことができるとされます。
それ故、このムドラーは完全を意味する「プールナ・ムドラー」とも呼ばれます。
ブラフマー・ムドラーを通じては、頭を動かしながらプラーナーヤーマ(呼吸法)を行う場合もあります。
この場合、ムドラーを形作った姿勢で、ゆっくりと息を吸いながら、顎と右肩が同じ位置になるまで頭を右に向け、その後、ゆっくりと息を吐きながら頭を正面に戻します。
これを、左、下、上の合計4方向に対して行います。
ブラフマー神は4つの頭を持ち、4つの方向すべてを観察していると伝えられます。
プラーナーヤーマと共に実践されるこのムドラーは、そんなブラフマー神が生命力であるプラーナを与えて宇宙の創造を行ったように、全身にプラーナを巡らすことができると伝えられます。
握られた拳は、内なる世界である私たちの身体に、5大元素の調和を生み出す象徴でもあります。
ブラフマー・ムドラーは、身体に調和したエネルギーを生み出し、私たちの意識を至高の世界へと導きます。
そこで人生における神聖な目的を認識するとき、ブラフマー神がそれを行うように、崇高な人生を創造することができるはずです。
(文章:ひるま)
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