霊性と関係性の深いシュラーヴァナ月は、ヒンドゥー教の聖典では1年で最も神聖な月として讃えられています。この聖なる月は、神の御加護を求めるために瞑想、断食、祈り、禁欲に励むことを帰依者に促しています。
シュラーヴァナ月の伝説と意味
シュラーヴァナ月の最も有名な伝説のひとつに、パールヴァティー女神の神話があります。シヴァ神を夫として迎え入れるため、彼女はシュラーヴァナの期間中、厳しい苦行と断食に身を捧げました。彼女の揺るぎない献身に心を動かされたシヴァ神は、彼女の願いに応え、パールヴァティー女神の夫となったといわれています。
シュラーヴァナ月はチャトルマース(聖なる4ヶ月間)の始めの月であり、献身と神への敬愛に捧げられる4ヶ月(シュラーヴァナ、バードラパダ、アーシュヴィナ、カールティカ)を示します。聖典には、この期間にヴィシュヌ神が乳海(クシーラ・サーガラ)の中の大蛇(アーディ・シェーシャ)の上でヨーガ・ニドラーとして知られる深い瞑想状態に入る様子が描かれています。それと同時に、この期間にシヴァ神は創造物全体を見渡します。この期間は、創造と破壊の間の循環的なバランスを象徴し、古いものが新しいものへの道を作ることを示しています。
シュラーヴァナ月の曜日毎の意義
シュラーヴァナの各曜日には、独自の霊的な意義があります。
- 月曜日はシヴァ神への礼拝に捧げられます。
- 火曜日は、女性は家族の幸福のためにガウリー女神に敬意を表します。
- 水曜日はヴィシュヌ神またはクリシュナ神の化身であるヴィタラ神を礼拝します。
- 木曜日はブッダとグルに捧げられます。
- 金曜日はラクシュミー女神とトゥラシー女神を讃えます。
- 土曜日は土星(シャニ・デーヴァ)に捧げられます。シュラーヴァナ月の土曜日はサンパット・シャニヴァラ(富の土曜日)とも呼ばれ、シュラーヴァナ月の毎土曜日に礼拝すると大きな富を獲得できると信じられています。
- 日曜日には太陽神であるスーリヤが礼拝されます。
シュラーヴァナ月における献身的実践
- ルドラ・アビシェーカ: 「ルドラ」は、シヴァ神が宇宙の踊りであるタンダヴァを踊る際に見せる、怒りの姿を表しています。アビシェーカとは、神に捧げる礼拝の方法のことで、礼拝者の怖れや罪を浄化するものです。アビシェーカの儀式では、以下のものを捧げます:
- パンチャームリタ(ミルク、蜂蜜、砂糖、ギー、凝乳を混ぜたもの)
- ガンガージャル
- ギー
- バエル・パトラ(ビルヴァの葉)
- その他シヴァ神に親しまれている神聖なもの
- 断食: シュラーヴァナ月には、信者たちは以下のような断食(ヴラタ)を行います:
- サーヴァナ・ソーマヴァーラ・ヴラタ:サーヴァナ・ソーマヴァーラ・ヴラタは、その月の毎週月曜日(ソーマヴァーラ)に行われます。シュラーヴァナ月には通常4回の月曜日があり、時には5回の月曜日があることもあります。
- ソーラハ・ソーマヴァーラ・ヴラタ:ソーラハ(Solah)は16を意味し、これは、理想的な夫を見つけるために若い女性たちが行う断食です。シュラーヴァナ月の最初の月曜日から16週連続で断食を行います。
- プラドーシャ・ヴラタ:プラドーシャ・ヴラタは、クリシュナ・パクシャとシュクラ・パクシャの両方の13日目(トラヨーダシー・ティティ)に観察されます。13日目は、シヴァ神を呼び出し、礼拝するのに特別に適していると考えられています。この日、信者たちは厳格な断食を行い、プラドーシャ・カーラ(夕方の特定の時間帯)の間にシヴァ神へのプージャー(礼拝)を行います。
- マンガラ・ガウリー・ヴラタ:マンガラ・ガウリー・ヴラタは、シュラーヴァナ月の火曜日に行われます。この断食は、幸せな結婚生活と、パートナーの健康と長寿を願って行われます。
- シャニ・ヴラタ:シャニ・ヴラタは、シュラーヴァナ月の土曜日に行われ、シャニ神の祝福に授かり、土星の悪影響を緩和するために行われます。
- シヴァ神への礼拝(シュラーヴァナ・ソーマヴァーラ・プージャー): 信者はシヴァリンガを用いてアビシェーカなどの儀式を行い、シヴァ神のマントラを唱え、シヴァ・プラーナを読み、シヴァの聖なる姿を瞑想します。欲望、怒り、執着、傲慢、貪欲といったこの世の幻想からの解放者であるシヴァ神は、私たちを真の目的へと導きます。シヴァ神の破壊的な力は浄化の意味を持ち、宇宙の新たな創造への道を開き、普遍的な幻想の美が展開する機会をもたらします。
シュラーヴァナ月とジョーティルリンガ
シュラーヴァナ月では、シヴァ神の最も重要な12の寺院である12のジョーティルリンガで賑やかな祭典が行われます。信者たちは何百万人も集まり、その場所は整地巡礼、プージャーやヤジュニャの拠点となります。
注目すべきシュラーヴァナ月の行事には、信者がガンガージャル(ガンジス川の聖なる水)を担いで主要なシヴァ寺院を巡るカーンヴァリ・ヤートラーや、ジャールカンド州デオガールのバーバー・バイディヤナータ寺院で1カ月にわたって行われるシュラーヴァニー・メーラーなどがあります。
シュラーヴァナ月の断食
シュラーヴァナ月の断食はシヴァ・プラーナで特別に言及されており、断食を行う者は願いが叶い、シヴァ神の恩寵を受けるとされています。断食中の信者は以下を摂取することが許されています:
- 果物
- 牛乳と乳製品
- 特定の許可された野菜
- 乾燥果物とナッツ
- 一部のスパイス
厳格に断食を守る者は以下を避けることが勧められています:
- 食卓塩(代わりに黒塩を選ぶ)
- 非ベジタリアンの食事
- 玉ねぎ
- にんにく
- なす
- 葉物野菜
断食は通常日没後に終了しますが、場合によっては翌日まで続くこともあります。別の断食の方法として、一日全く話さない「マウン・ヴラタ」(沈黙の断食)があります。
シュラーヴァナ月の月曜日(ソーマヴァーラ)に断食を行うことは、精神的な至福、身体的および精神的な健康の改善、意志力と記憶力の強化、世間の恐怖からの解放、家族の幸福、そして究極的にはモークシャ(解脱)へとつながると言われています。
最後に
シュラーヴァナ月は、霊的な修養、瞑想、祈り、断食、神への感謝を通じて、ヒンドゥー教徒にとって聖なる時期です。この時期は霊的な覚醒を促し、自己の深淵を探求し、身体、心、魂の浄化と回復をもたらします。シュラーヴァナ月の曜日、断食などの霊性修行は、信者にとって大切な意味を持っており、信仰、信頼、愛、敬虔さを体験できる最高の期間といえるでしょう。
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