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雑記帳

ダットゥーラの花

乾いた大地を潤すモンスーンの雨が本格的に降り始めるインドの7月。
この雨季の始まりはシュラーヴァナ月と呼ばれ、シヴァ神を礼拝する神聖な時となります。
そんな雨季の季節を彩るように美しく花を咲かせる植物があります。
ダットゥーラと呼ばれるその花は、シヴァ神が好む花といわれ、このシュラーヴァナ月においてシヴァ神へダットゥーラを捧げることはとりわけ吉祥な行いとされています。

ダットゥーラは、チョウセンアサガオを意味します。
美しい花を咲かせるだけでなく、薬用植物としての一面もある一方で、有毒植物として毒性が非常に強いことが広く知られる植物です。
言い伝えでは、シヴァ神が乳海攪拌によって生まれた猛毒を飲んだとき、このダットゥーラがシヴァ神の胸から現れたと伝えられます。

乳海撹拌は、不死の霊薬であるアムリタを得るために、神々と悪魔が協力し海を撹拌したと伝えられる神話です。
その過程では、霊薬であるアムリタだけでなく、猛毒であるハラーハラも生み出されてしまいます。
世界を救うために、そのハラーハラを飲み込んだのがシヴァ神でした。

そうして猛毒を飲んだシヴァ神の胸から生まれたといわれるダットゥーラは、有毒な種子を多く含む果実を実らせます。
これらの種子を摂取することで、興奮や麻痺といった中毒症状を引き起こすことが伝えられています。

乳海撹拌は、私たちが歩むべき霊性修行の道のりが記された神話として伝えられることがあります。
そこで生み出された猛毒は、強欲や執着、嫉妬や愛憎、怒気や慢心など、私たちの揺れ動く心から生まれる悪の質に例えられます。
これらを飲み込むことができるのは、破壊神であるシヴァ神だけです。

インドでは、神々に捧げられた供物は帰依者が分け合い、プラサーダとして食されることが多くあります。
しかし、シヴァ神の象徴であるシヴァリンガムに捧げられた供物だけは、帰依者は食すべきではないといわれることがあります。

ダットゥーラに見られる有毒なものをシヴァ神へ捧げることは、私たちがシヴァ神に自分自身の内に潜む悪の質を差し出す必要があることを意味しています。
その悪の質は決して分け合われるものではなく、世界の安寧というより大きな目的のために、破壊神であるシヴァ神だけに受け入れられるべきであることが示されています。

シヴァ神は、すべてを受け入れる寛大な神として崇められます。
私たちの行き場のない想いを受け止め、誰しもが持つ神性を目覚めさせてくれるシヴァ神は、この世界の安寧を願い瞑想を続けています。
そんなシヴァ神に心を明け渡す時、私たちの内なる世界は清められ、この世界には平和が満ちるに違いありません。

(文章:ひるま)

※神々に捧げられた供物は恵み深い施物であるため、シヴァ神に捧げられた供物も無駄にすることなく食される(有毒なものは除いて)べきという考えも多くあります。

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