インドの神話には、意のままに自在に飛翔し、瞬時に目的地へと達することができると伝えられる神秘的な乗り物があります。
プシュパカ・ヴィマーナと呼ばれるその乗り物は、財宝の神として崇められるクベーラ神が所有していたことで広く知られます。
クベーラ神がプシュパカ・ヴィマーナを所有する意味を読み深めると、物質的な豊かさと精神的な豊かさについて更なる智慧を培うことができます。
ヴィマーナという言葉には「車」や「乗り物」という意味があり、神々の乗り物、戦車、飛行機、あるいは宮殿など、さまざまな文献にその記述が見られます。
それは、ただの物理的な移動手段に留まらず、神々の持つ進歩的で超常的な力の象徴であると捉えられます。
中でも、クベーラ神が所有していたヴィマーナはプシュパカ・ヴィマーナと呼ばれ、その特異な能力で広く崇められています。
プシュパカ・ヴィマーナは、ラーマ神がラーヴァナを打ち倒した後、仲間の全員を乗せてアヨーディヤ王国へと帰還したことで知られます。
プシュパカ・ヴィマーナはその大きさを自由に変えることができ、無数の乗客を乗せる能力がありました。
これは、限りない慈悲と寛大の心を象徴しており、世界の富を管理し分配するクベーラ神の精神を象徴するものと伝えられます。
1年の大吉日といわれるアクシャヤ・トリティーヤーは、クベーラ神が財宝の神としての地位を得た日でもあります。
豊かな富を分け与えるクベーラ神は、プシュパカ・ヴィマーナに乗って、人々に富を分配するとも伝えられます。
アクシャヤ・トリティーヤーでは寄付や喜捨が特に重要視されるように、真の財宝は分け与える豊かな心の中にあるという教えが示されています。
与えるという行為は、個人だけでなく世界に平和をもたらす、究極の霊性修行であるといわれます。
それは、いつまでも満たされない私たちの心が「足るを知る」ことであり、朽ち果てることのない自分自身の本質に気づくことでもあります。
そして、その行為は人々の心を育み、やがて社会全体により大きな豊かさを生み出すものとなります。
プシュパカ・ヴィマーナが空を自在に飛ぶ能力は、魂の昇華を象徴するともいわれます。
私たちが所有する物質的な富が、霊的な智慧に導かれるとき、それは精神的な探求のための道具となり、高次の意識へと導く力になります。
プシュパカ・ヴィマーナを所有するクベーラ神に倣い、物質的な手段と精神的な目標を調和させながら、真理を追求する歩みを続けていきたいと感じます。
(文章:ひるま)
コメント