さまざまに異なる思想や文化が共存するインドの各地において、シュラーヴァナ月の満月には、兄弟姉妹の絆を確かめ合うラクシャー・バンダンの吉日が祝福されます。一方で、一部の地域や慣習では、ガーヤトリー女神の降誕日であるガーヤトリー・ジャヤンティーが祝福されるところもあります。
2016年のシュラーヴァナ月の満月は、8月18日です。その前には、日本では終戦の日として、またインドでは独立記念日として深い祈りが捧げられる8月15日を迎えます。この日、インドの各地では、サフラン色、白色、緑色の3色からなるインドの国旗がはためきます。
インドの国旗にあらわされたサフラン色は、勇気と犠牲、ヒンドゥー教を、緑色は公平と忠誠、イスラム教を象徴し、中心の白色は、平和と真理、そして他の宗教を含めた調和を表わしているといわれます。調和をあらわす白色の中心には、ダルマ・チャクラ(アショーカ・チャクラ)と呼ばれる輪が描かれ、人々の心を苦から救う真理の教えの象徴として崇められています。
このダルマ・チャクラには、24のスポークが描かれています。それは24という時を示しているとも、また、仏陀が説いた十二因縁の順観と逆観を示しているともいわれます。さらには、24音節からなるガーヤトリー・マントラを示していると伝えられることもあります。
ガーヤトリー・マントラはインドの文化の中でもきわめて重要なマントラに位置付けられ、ラクシャー・バンダンと同じ日に、僧侶たちの間では重要な儀式とともにガーヤトリー・ジャパが執り行われます。ガーヤトリー・マントラの24音節は、人間の肉体の24の異なる部位に共鳴し、真実を理解する光と、過去世に犯した罪の浄罪を授けると信じられています。
12億人超の人口を抱えるインドの大地には、異なる宗教や思想、慣習、言葉、文化が渦巻いています。時に混沌としながらも、それらが調和の中に共存する社会には、精神性を育む豊かな叡智が溢れていることに気付かされます。古代から示され、現代へと受け継がれてきたこうした叡智を見失うことなく、私たち一人一人が深い気付きを持ち続けなければならないと実感します。そうして世界が常に平和であることを、心から願ってなりません。
(文章:ひるま)
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