初春を迎え、気持ちを新たに目標を立てた方も多くいらっしゃることと思います。
インドでは、物事の始まりにはガネーシャ神へ祈りを捧げることが欠かせません。
あらゆる災いを取り除き、全世界に幸福をもたらすガネーシャ神には、それを象徴するある言い伝えがあります。
ヒンドゥー教の3大神の1柱であり、維持神として世界を守るヴィシュヌ神は、法螺貝であるシャンカを常に手にしていることで知られます。
シャンカの音は神の顕現ともいわれる聖音オームの音であり、祈りの儀式においては必要不可欠なものでした。
その響きは、無意識のレベルで身体に浸透し、私たちを本質へと導く力を秘めているといわれます。
ある時、このシャンカが見当たらなくなったことがありました。
ヴィシュヌ神がシャンカを探していると、遠くの方からシャンカの音が聞こえてきます。
それは、シヴァ神が住まうカイラーサ山から鳴り響いていました。
ヴィシュヌ神がカイラーサ山を訪ねると、シヴァ神の息子であるガネーシャ神がシャンカを吹いています。
ガネーシャ神がシャンカに夢中であったため、ヴィシュヌ神はシャンカを返してくれるように頼んで欲しいと、シヴァ神に依頼します。
しかし、ガネーシャ神を心から崇拝しない限りそれは不可能であるとシヴァ神は答えました。
ヴィシュヌ神は、ガネーシャ神への祈りの儀式を準備し、心からの祈りを捧げます。
すると、ガネーシャ神は喜び、ヴィシュヌ神へシャンカを返したと伝えられます。
この言い伝えは、ヒンドゥー教の3大神に数えられる偉大なヴィシュヌ神ですら、願望を成就するためには謙虚にガネーシャ神を礼拝しなければならなかったことを示しています。
それは、成功を収めるために、私たちがまずエゴを取り除く必要があることを伝えています。
私たちを目標に向かって突き動かす原動力となるエゴも、行き過ぎたそれは、さまざまな問題を引き起こします。
時に傲慢になり、崇高な存在である自分自身の本質を見失えば、多くの困難に直面し、思い悩まなければなりません。
何より、ガネーシャ神は折った自らの牙でマハーバーラタを書き記すなど、犠牲の精神が溢れる神格です。
そうして偉業を成し遂げていくガネーシャ神は、物事の始まりに礼拝される存在となって、私たちがまずエゴを取り除く必要があることを教えてくれています。
そんなガネーシャ神を礼拝する時、私たちは障壁を乗り越える知力を得て、成功に向けてまっすぐに進んでいくことができるはずです。
皆様にとって、この一年が実りある幸せな一年となりますように、心よりお祈り申し上げます。
(文章:ひるま)
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