インドには、敵対者に勝利するために祈られる畏怖神が、何柱もおられます。
よく話題にさせていただく、バガラームキーしかり、有名なカーラ・バイラヴァしかり・・・
古代インドでは、ドラヴィタ人や他の先住民族、そして北方から侵入してきたアーリア人、時代が下れば、モンゴル系やイスラム教の人たち、と様々な人種や文化を持つ人たちが入り混じって覇権争いをしていたのでしょうから、それぞれのグループのいわゆる神官たちが、敵対者に対する勝利をそれぞれの神に祈って事は、想像に難くありません。
さて、話を現代に戻しますが、敵対者に勝利する神に対して素朴な疑問を思い浮かべる方もおられるのではないでしょうか?敵も、同じ敵対者に対する神に祈っていた場合です。この場合はどうなるのでしょうか?
これに関しての答えは、基本的には敵対者に勝利する神は、実は「悪」に勝利する神であると、いうことです。ですから敵対する者同士が同じ神に祈った場合、正しい方が勝つのです。バガラームキーなどは、礼拝を開始する際に「悪い敵ばかりでなく、自分の中の悪をも滅ぼします。」とわざわざパンデット(神官)に言われることさえあります。
もちろん、善悪に関係なく、敵対者を滅ぼす神格というのも存在します。しかし、インドの伝統的な考え方によれは、神に大きく2種類あると言われます。簡単に言えば輪廻の外にいる神、と輪廻の中にいる神です。
善悪に関係なく、祈願者の希望に応え、敵対者を滅ぼす神格というのは基本的に輪廻の中にいる神格なのです。いわばある意味で私たちと同じ悩み苦しむ存在であるとも言えます。一方、悪を滅ぼす神格は、大抵の場合輪廻の外の存在と考えて差し支えないでしょう。
輪廻の中の神は、その外の神には太刀打ちできません。ですから本質的な意味で「悪」が永遠に栄えることはないと言えます。
なお、このような神々は、インド占星術では、火星、土星、ラーフなどのかなり厳しい星を統べる神格とされているのも興味深い現象です。
人間の持つネガティヴな感情に深く根ざしているということなのでしょう。
ですのでネガティヴな感情を制御できている正しい心の持ち主は、いかなる畏怖神に祈っても問題ないのです。
(文章:ガネーシャ・ギリ)
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ガネーシャ・ギリ氏共著 『インド占星術と運命改善法』
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