さまざまな思想や慣習が生きるインドにおいて、東インドの聖地プリーでは、世界的にも有名となった盛大な祝祭ラタ・ヤートラーを迎えようとしています。ラタ・ヤートラーでは、ジャガンナータ神としてのクリシュナ神、そして兄であるバララーマ神に加え、妹のスバドラー女神が熱心に礼拝されます。
インドの多くの思想や慣習では、シヴァ神とパールヴァティー女神、ヴィシュヌ神とラクシュミー女神のように、神々の夫婦が揃って礼拝されることが多くありますが、クリシュナ神とスバドラー女神のように兄弟姉妹で礼拝されることは多くありません。
ヴィシュヌ派の信仰では、スバドラー女神は神々があらわす力の中でも最も重要といわれる「ヨーガマーヤー」であると信じられています。一説に、スバドラー女神はドゥルガー女神の化身であり、ヴィシュヌ神のヨーガマーヤーとしてのあらわれであるといわれます。
悪行を重ねていたカンサ王は、クリシュナ神に殺されると予言されていたため、クリシュナ神が生まれると同時に殺害をしてしまおうと悪事を企てます。しかし、クリシュナ神は同日に生まれた女児の赤ん坊にすり替えられ、カンサ王の手に掛かることはありませんでした。この女児の赤ん坊がヴィシュヌ神のヨーガマーヤーとしてのあらわれであり、妹として崇められるようになったスバドラー女神であると信じられています。
ヨーガマーヤーは神々があらわす内的で霊的なエネルギーであり、精神世界を生みだします。マハーマーヤーは神々があらわす外的で物質的なエネルギーであり、物質世界を生みだします。ヨーガマーヤーに夢中になる時、私たちは神々を見つけ、マハーマーヤーに夢中になる時、私たちは神々を見失うとも伝えられることがあります。
ラタ・ヤートラーで熱心に礼拝されるクリシュナ神とスバドラー女神を見ると、神々があらわす世界の美しさを見るように思います。ヨーガマーヤーの下で自分自身を育むことで、不変の存在である神々に繋がった永遠の至福を得ることができるに違いありません。自分自身の存在が、神々に繋がる結合のエネルギーであれるよう、日々の歩みを努めたいと感じています。
(文章:ひるま)
参照:http://www.harekrsna.de/artikel/maya-shakti/maya-shakti.htm
http://gosai.com/writings/the-case-of-subhadra
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