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「ヨーガ・ニドラー」の語源と本質

最近、「ヨーガ・ニドラー」という言葉が知られるようになってきました。

一部ではニードラと書かれていますが、ニードラは間違った表記で、正しくは、ニドラー、です。

 

このヨーガ・ニドラーという言葉、「ヨーガ」と「ニドラー」という二つの単語の組み合わせでできています。

 

ヨーガは √yuj (繋ぐ)という動詞からできた派生名詞で、もともとは「くびき」「結合」の意味。ブラフマン(宇宙の根本原理)とアートマン(真我)との結合、心と体の結合、など様々な捉え方ができますが、今日では、心身の修行法として広く使われています。

 

一方、ニドラーは ni√drā(眠る)という動詞からできた派生名詞で、「眠り」という意味があります。

 

「ヨーガ・ニドラー」は、普通は「眠りのヨーガ」「寝ヨーガ」等と説明されています。その方法は様々ですが、おおまかには、体を横たえたシャヴァ・アーサナ(屍のポーズ)をとって、呼吸法や、意識を身体各部位へ向けた後に身体を脱力させる方法などを組み合わせることで、睡眠と瞑想の中間のような深いリラックス状態に入ることと言えるでしょう。心身のリラックス効果があるとされています。

 

「ヨーガ・ニドラー」という言葉は、古代叙事詩『マハーバーラタ』の中にも見出されますし、プラーナ聖典の中にも出てきます。そこでは、「眠りのヨーガ」という意味ではなく、ヴィシュヌ神が原初の海に横たわり眠っている状態を指しています。

 

例えば、「マハーバーラタ」の一節ではこのように出てきます。

 

अध्यात्मयोगनिद्रां च पद्मनाभस्य सेवतः। Mbh.1.19.13a

युगादिकालशयनं विष्णोरमिततेजसः।। Mbh.1.19. 13b

adhyātmayoganidrāṃ ca padmanābhasya sevataḥ। Mbh.1.19.13a

yugādikālaśayanaṃ viṣṇor amitatejasaḥ।। Mbh.1.19. 13b

 

『〔海は〕、蓮のへそを持つ者、計り知れない威力を有するヴィシュヌ神がアートマンと結合する眠りにつくとき、ユガの始まる時の寝床となる。』

 

神々の一日は人間の時間に換算すれば計り知れない長い年月に相当しますが、神も夜を迎えれば眠りにつきます。人が眠ると意識がなくなり外界は存在しないに等しいのと同様に、神が眠るとき、世界のすべてを滅する火や洪水や風が起き、世界は消滅します。しかし神の眠りは単なる「眠り」ではありません。全てが無となったように見えても、世界の一切はヴィシュヌ神のなかに溶融ています。やがて雨が大地に降り注ぎ、大海が生じます。静寂の大海のなかで、無始(アナンタ)という名を持つ大蛇の寝椅子の上で、ヴィシュヌ神が横たわっています。

「ヨーガ」は、世界の終わりと世界の始まりの「繋ぎめ」であり、宇宙と一切存在の「結合」、最高神とアートマンの「結合」です。そして「眠り」は、世界の始まり、再生のためにあります。

このように、「ヨーガ・ニドラー」とは、宇宙あるいは最高神の中に自身をゆだねている状態としてイメージすることができるでしょう。

 

【単語の意味と文法の解説】

 

左から、デーヴァナガーリー表記、ローマ字表記、<名詞の語幹形、動詞の語根形 >、語意、(文法的説明)、「訳」、という順番で説明しています。

 

अध्यात्म- <adhyātma-> 真我(中性名詞、複合語、yogaにかかる)

योग- <yoga-> 結合(動詞√yuj-(繋ぐ)からできた男性名詞、複合語、nidrāにかかる)

निद्रां  nidrām <nidrā-> 眠り(動詞ni√drā-(眠る)からできた女性名詞、対格、単数)

「真我と結びついた眠りに」

च  <ca> そして~(接続詞)「そして」

पद्म- <padma-> 蓮 (男性名詞、所有複合語、次のnābha-にかかる)

नाभस्य nābhasya < nābha-> へそ (男性名詞、属格、単数)「蓮のへそを持つ~」

सेवतः sevataḥ < sevat-> 住んでいる(動詞√sev-(定住する)現在分詞、属格、単数)「住んでいる~」

युग- <yuga-> ユガ、神的世紀(中性名詞、複合語)

आदि- <ādi-> 始まり(男性名詞、複合語)

काल- <kāla-> 時間(男性名詞、複合語)

शयनं  śayanam <śayana-> 寝床(中性名詞、主格、単数)「ユガの始まる時の寝床」

विष्णोर् viṣṇor <viṣṇu-> ヴィシュヌ(男性名詞、属格、単数)「ヴィシュヌの」

अमित- <amita-> 計り知れない、無量(否定の接頭辞 a-をつけ√mā-(計る)現在分詞、複合語、次のtejasにかかる)

तेजसः tejasaḥ <tejas-> 威力、力(中性名詞、属格、単数)「計り知れない威力を持つ~」

 

(文章:pRthivii)

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